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純心と新しい思い出/ピュアハート編完結


お風呂上りには、犬女ちゃんを

ドライヤーで乾かして、

耳掃除もしてあげる。


「これは、思った以上に、大変なことのようでしてよ」


生徒会長は、犬女ちゃんの世話の

大変さを改めて思い知った。


「おやめになるのなら、今のうちですわよ」


お嬢様はまだ対抗意識を燃やしているようだ。


「そ、そんなことは言っておりませんでしてよ」


こんな、体育会系の新入部員に対する

しごきのような展開を経て、

生徒会長も犬女ちゃんの世話当番に、

晴れて加わることになる。


一緒にお風呂に入って、

同じ釜の飯を食べるのだから、

犬女ちゃんも生徒会長を

群れの仲間と認識することだろう。




「純心さあ、この暑いのに、鍋とかないわー」


「なんでさ?」

「やっぱり、大勢人が集まったときは、鍋だろ、鍋」


「いや、もっとレパートリー増やしなよー」

「夏でしたら、流しそうめんとかもよくてよ」

「私、流しそうめん、やったことないのでやってみたいですわ」

「そういや、デザートにスイカあるぞ」

「わんわん」


みんなで楽しい話をしながら食事をする。


「ねえ、夏休みだしさ、みんなでどこか行こうよー」

「避暑地の別荘にご招待してさしあげてもよくってよ」

「いいですわね、私のお家はプライベートビーチならありますわ」

「あなた達、やっぱりお金持ちなんだねー」

「確かに我が校は、裕福なご家庭が多くてよ」

「お嬢様のお屋敷すごかったぞ」

「わんわん」


夏休みの旅行の計画とか。


「てか、お前部活はさ?そんな休んでばかりいられないだろ」

「大丈夫、今年は夏休みの練習、そんなハードじゃないから」

「いえ、我が校の名誉のためにも、

また大会で優勝していただかなくてはならなくてよ」

「今度は私も応援に行かせていただきますわね」

「はーい、犬女ちゃんと自主練、頑張りまーす」

「わんわん」


学校の話とか。


「夏祭りとかも行ってみたいですわね。

私、今までプライベートでお付き合いのあるお友達が

少なかったので、あまり行ったことがないんですの。」

「私もあまりそういうお祭りには参加したことなくてよ」

「ホント?じゃぁみんなで行かなきゃねー

犬女ちゃんにも浴衣着せてあげてさ」

「犬女用の浴衣ってあんのか?」

「わんわん」


夏祭りの話とか。


純心はずっと犬女ちゃんの頭を優しく撫で続けていた。

犬女ちゃんも純心にすり寄って甘えている。



純心も、犬女ちゃんも、

群れの仲間と一緒にいる

この賑やかな時間が、

とても楽しかった。嬉しかった。


もう二度と元に戻らないと思った時間。

みんなが一緒に元に戻したいと思ったからこそ、

奇跡的に元に戻せた時間。


過去の思い出がないのなら、

新しい思い出をたくさんつくればいい。


過去にツライことがあったのなら、

新しい楽しい思い出をたくさん増やして、

ツライ過去の思い出の比率を小さくしていけばいい、

純心はみんなといるとそういう風に思えた。


父親のようにはなりたくない。

純心はまだ自分を怖れていたし、

まだ自分を信じられなかった。

誰かを傷つけることを怖れていた。


でも群れの仲間と一緒に、みんなと一緒に、

そして犬女ちゃんが一緒にいてくれたら、

変えていけるのではないかとも思いはじめていた。



彼等はまだ高校生。

これから彼等は、きっといくらでも変って行くことが出来るだろう。

彼等の成長物語は、まだはじまったばかりなのだから。







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