犬女ちゃんと『ファーストキスの会』(2)
お嬢様をじぃっと見つめる犬女ちゃん。
お嬢様はごくりと固唾を飲んだ。
「わ、わかりましたわ…。
私も犬女さんにファーストキスを捧げますわ。」
唇とんとんからの、おでこくっつけ、の手順で、
目を閉じてお嬢様にキスする犬女ちゃん。
お嬢様は顔を赤くして恥じらう。
「こ、これはもう、犬女さんに
ファーストキスを奪われた仲間ですわ。」
「ファ、ファーストキスの契りですわ。」
またお嬢様のテンションが
無駄に上がって来てしまったようだ。
「我ら生まれたときは違えども、死ぬときは一緒だー!
みたいな?」
「おー!」
「なに言ってんだ?お前ら」
久しぶりの集いに、夏希もお嬢様も、
テンションが高かった。
犬女ちゃんも尻尾を振って喜んでいた。
これが犬女ちゃんの群れの仲間なのだから。
生徒会長がいないときで、
本当に良かったと心から思う純心。
こんなキス大会を見られたら、
何を言われるかわかったものではない。
家の呼び鈴が鳴り、
生徒会長がやって来た。
ちょうど手が離せなかった純心は、
インターフォン越しに、
勝手に上がってくれるように伝える。
玄関では犬女ちゃんが、
尻尾を振ってお出迎えしている。
靴を脱ごうと屈んだ生徒会長を、
じぃっと見つめる犬女ちゃん。
「犬女さん、私の顔になにか付いていまして?」
犬女ちゃんは生徒会長の唇を
肉球でとんとんする。
「きゃあぁぁぁぁぁ!」
玄関から生徒会長の悲鳴が聞こえて来た。
「な、なんですの!?」
「私のフォーストキスが奪われてしまいましたわ!」
顔を真っ赤にして、
純心を問い詰める生徒会長。
『お前もかよ』
内心純心はそう思わなくもなかった。
「えー、ほらあれ、挨拶ですよ、
そ、そ、挨拶、挨拶」
「海外赴任のうちの親が、挨拶でキスしたのを
真似しちゃって困ってるんですよー」
親が海外赴任していることを絡めて、
本人的には結構よく出来た言い訳だと思っている。
「あ、あら、そ、そうでしたのね。
あ、挨拶でしたら仕方なくてね」
動揺している生徒会長。
キスで動揺するあたり、
伊達に男女交際に反対しているわけではない。
「で、でも、妙に手順が生生しかったですわね。
ちょっと儀式みたいでしたし」
ギクッとする純心。
「どうしたのー?」
お風呂掃除をしていた夏希が、
様子を見に顔を出して来る。
「ファーストキスの会に、
メンバーが増えたようですわよ」
お嬢様にしては珍しく不敵にニヤリと笑う。
犬女ちゃんはみんなとキスが出来て、
満足そうに尻尾を振って喜んでいる。




