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犬女ちゃんと歯磨き

『今日は

なんだかんだ一日

こいつの下の世話で

終わってしまった。

もう明後日から

新学期がはじまるというのに。』


『それでも、

下関係の問題は

今日で終わったはずだ。

いや、頼むから

そうであってください。

お願いします。』


純心がそう思っていると、

再び母親からメールの着信があった。


「歯磨きも毎日してあげてね。」


メールにはそれだけ書かれていた。


『なんで、まとめて

書いてよこさねえんだよ。

いちいち一つずつ、

わざわざ間を空けて送って来て。』


純心には、母親がわざと

やっているのではないかとすら思えた。

どこかにカメラでも隠してあって、

見て楽しんでいるのでは

ないかと疑うレベルだ。




「馬鹿犬、歯、磨くぞ」


家に買い置きがあった歯ブラシを

純心は取って来た。


犬女ちゃんは寄って来ると、

ソファに座った純心の膝に頭を乗せ、

まるで膝枕をしてもらうかのように寝転んだ。


犬女ちゃんは、

歯磨きはあまり好きではなかったが、

歯磨きをするとき、おばあちゃんが

膝枕してくれるのが好きだった。

おばあちゃんの膝枕に

甘えるのが大好きだった。


純心の膝枕は、

おばあちゃんと同じ匂いがして、

犬女ちゃんは嬉しかった。



一方、犬女の歯磨きの仕方など

知らない純心は、

こういうものなのかと思いつつ、

少しどきどきする。


知能は残念だが、

超美少女の犬女ちゃんが、

自分の膝に頭を乗せて、

膝枕してもらっているという事実に、

純心は胸のどきどきがおさまらなかった。


その笑顔はやはり何度見ても可愛く、

美しいピンク色の

つやつやした可愛らしい唇に、

純心は思わず吸い込まれそうだった。


どきどきして緊張に震えながら、

口を開けさせるふりをして、

犬女ちゃんの顎に手をかけ、

その唇に指でかすかに触れてみる。

ぷにぷにしていて、

なんと柔らかいのだろうか。

純心の胸の鼓動は高鳴り続けた。


犬女ちゃんは、唇に触れられ、

きょとんとしていたが、

眩いばかりの笑顔で純心を見つめる。


ああ、今日一日の苦労は

このためにあったのだ。

そうだ、そうに違いないと、

純心は感激する。



純心が歯ブラシを出すと、

犬女ちゃんは、その口を大きく開けて、

あーんをした。


他人の口の中など

覗いたことがない純心は、

なんだかいけないものを

見ているような気分だったが、

指が使えない犬女ちゃんの代わりに、

歯を磨いてあげる。


犬女ちゃんの口の中は、

人間の口の中とほぼ変わらなったが、

犬歯が異様に大きく鋭かった。


純心はさっきのぷにぷにした

唇の感触が忘れられず、

あの唇で指をちゅぱちゅぱして

もらえたりしないだろうかと、

童貞には不相応な妄想をしていた。


しかし、そんなことを考えていると、

犬女ちゃんがくしゃみをして、

歯ブラシを嚙み砕いた。


『で、ですよねー

女犬じゃなくて犬女でもんねー

どんなに可愛くても

犬要素入ってますよねー』


純心は絶対口の中に指入れるとか、

二度と考えまいと心に誓った。



こうして純心と

犬女ちゃんの共同生活は、

二回目の夜を迎えたが、

やはり一人で寝られない犬女ちゃんは、

純心が寝た後、

純心のベッドにこっそり潜り込んで

添い寝するのだった。






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