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犬女ちゃんとおばさん

犬女ちゃんは、しばらく、

おばさんの家でお世話になっていた。


傷も癒えず、体力もすり減らしていた

犬女ちゃんは、回復するまで、

動くことが出来なかった。


何よりここは、犬女ちゃんにとって

あまりに居心地が良過ぎた。


ここは穏やかで優しい世界で、

犬女ちゃんは、大好きなおばあちゃんと

暮らしていた日々を思い出していた。




おばさんは、ネットで犬女ちゃんのことを調べていた。

今どき犬女を飼っている人も少ないため、

ネットで情報を調べれば、

すぐにわかるだろうとおばさんは思っていた。


案の定、以前散歩中の、または公園で、

犬女ちゃんらしき犬女を見かけたという情報があり、

犬女ちゃんの目的地のだいたいの場所は特定された。


近くはなかったが、

そこまで遠いという距離でもなかった。

犬女ちゃんはここまで頑張って、

近づいて来ていたのだ。



ネットには飼い主が、犬女ちゃんを

探しているという情報もあった。

おばさんは、犬女ちゃんの飼い主に

連絡をしようか迷っていた。


しかし、あの犬女ちゃんの体にあった痣。

きっと飼い主が殴ったか蹴ったかして

出来た痣であろうとおばさんは思っていた。

あんな可愛い犬女ちゃんに、

暴力を振るっていじめるような飼い主には、

返してあげたくはない、そう思った。


おばさんも悪意がある人ではない。

この社会では、飼い主による犬女虐待は

当たり前のようによくあることだったから、

おばさんがそう思うのも仕方がないのかもしれない。


おばさんには犬女ちゃんに

思い入れをする理由もあった。




犬女ちゃんの体力は回復して来ていたが、

おばさんのもとをなかなか

離れることが出来ないでいた。


おばさんからは、大好きだったおばあちゃんと

そっくりな匂いがして、まるでおばあちゃんと

一緒に暮らしているみたいだった。


おばさんは、いつも

とても優しく抱きしめてくれるし、

とても優しい手で頭を撫でてくれる。

まるで本当に愛しい自分の娘を

抱きしめて、頭を撫でるみたいに。



おばさんは、買い物に行ったとき、

犬女ちゃんの新しい服を買って来てくれていた。

犬女ちゃんは買ってもらった服に身を包み、

おばさんと一緒に散歩に出かける。


おばさんと一緒に山道を登って行く。

おばあちゃんと一緒に遠くまで

お出かけをしたときのことを思い出す犬女ちゃん。

山の展望台まで辿り着くと、そこで休憩する。



山の展望台からの眺望。

犬女ちゃんは景色をじっと見つめている。

どこを見て何を思っているのか。



おばさんは犬女ちゃんの顔を見つめていた。


「犬女ちゃん、あなた、うちの子にならない?」


犬女ちゃんはおばさんの声に

反応して振り返ると、

その大きなくりくりした瞳で

おばさんの顔をじっと見つめた。


「私にも娘がいたんだけど…。

ちょうどあなたと同じ年ぐらいの。

でも事故で亡くしてしまってね…。」


おばさんの目からは涙が溢れている。


「夫にも先立たれてしまっていてね。」


「おばさんとっても寂しいの…。

だから、あなたがうちの子になってくれたら、

おばさんとっても嬉しいんだけどな。」


おばさんは、泣きながら犬女ちゃんを抱きしめた。

やはり、おばあちゃんに抱きしめられているようで、

とても優しくてあたたかい。


「あなたをぶったり蹴ったりするようなご主人様より、

おばちゃんと一緒に暮しましょ、ね?」


おばさんは、泣いて気持ちが

昂ぶってきているようだった。


「お願い…もうどこにも行かないで…」


気持ちが昂り過ぎて、犬女ちゃんを

亡くなった娘さんと混同しはじめた。


「ずっと一緒にいて…もう離さないから…」


おばさんは犬女ちゃんを抱きしめて、ずっと泣いている。


犬女ちゃんはクゥーンと低く鳴いた。


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