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犬女ちゃんと深い山奥

どこか遠くに行ってしまいたい。

誰もいないどこか遠くへ。

純心は心のどこかでそう思っていた。


まだ頭の中は真っ白なままで、

割れるように痛く、

自分がなにをやっているのかも

よくわからなかった。



純心は田舎のローカル電車に乗って、

どこか遠くの知らない場所に向かっていた。

窓の景色は、ひたすら山と田園風景が流れる

そんな地域だった。


犬女ちゃんは純心が心配で、

少し離れて後をついて来ていた。


一度、殴られたり、蹴られたりしたぐらいで、

犬女ちゃんの純心に対する想いは、

無くなるものではない。


田舎のローカル電車で、

人がほとんど乗っていないのは幸いだった。

犬女が電車に乗るのは大変なことだ。

大型犬を電車に乗せるようなものだから。

大勢の人がいる電車であれば、

犬女ちゃんが乗って来たら、

大騒ぎになっているかもしれない。



純心は終着駅で電車を降りると、

山に向かって歩き続ける。

犬女ちゃんもその後をついて行く。

犬女ちゃんがついて来ていることを、

純心が認識しているどうかはわからなかった。


山を登り、どんどん深い山奥へと入って行く純心。

犬女ちゃんは、心配だった。

純心が死ぬのではないかと。

こういうとき、人間は自ら死ぬのだということを、

過去の経験として犬女ちゃんは知っていた。


山の高いところにある急斜面。

落ちたら死ぬか、助かったとしても

それなりに大怪我するであろう、

そんな場所を純心が歩こうとするたびに、

犬女ちゃんはハラハラどきどきしていた。

いつでも助けに行けるように準備もしていた。


純心は死にたいわけではなかった。

いなくなってしまいたいと言うのが正確な表現だった。

別に自分は生きていてもいい。

どこか誰もいないところで、一人で暮らして、

みなの記憶から消えてしまいたい、

みなの記憶から消し去って欲しい、

それが今の純心の望み。



山頂付近に佇む純心。

犬女ちゃんは、純心がそこから

飛び降りるのではないか、

心配でたまらなかった。


純心の制服の裾を口に咥えて、

もう帰ろう、と言わんばかりに引っ張った。

純心は犬女ちゃんを一瞥すると、

表情を変えることなく、

手を振って、追い払った。


しかし犬女ちゃんは諦め切れなかった。

このままでは純心がどこかへ

行ってしまうかもしれない。

せっかくまた会えたのに、

また会えなくなってしまう。

今度はずっとずっと会えなくなってしまう。


犬女ちゃんは純心の制服の裾を

諦めずに何度も引っ張った。

あまりのしつこさに、

純心は激昂して、キレて、

犬女ちゃんを再び殴り、蹴とばした。


純心に蹴られ、後ろによろけたとき、

巨木に頭を打ちつけた犬女ちゃんは、

脳震盪を起こして気絶してしまう。



再び犬女ちゃんが目覚めたとき、

純心の姿はどこにもなかった。


犬女ちゃんは、

この知らない山奥に置き去りにされた。

捨てられたと言ってもよかった。

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