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犬女ちゃんと純心の闇(3)

当日、純心は頭が割れるように痛かった。

純心はもう自分はだめかもしれない、そう思っていた。

退学とかではなく、もっと根本的な部分で。

思い出せないが、おそらくは過去にもあった、

暗くどす黒い感情が日に日に強くなっていく。

自分はもう今までの自分ではいられないかもしれない、

そう直感していた。


今回の騒ぎのきっかけをつくってしまった

夏希は純心と犬女ちゃんに泣いて詫びたが、

純心は夏希を責めはしなかった。

いずれにしてもあのままでは犬女ちゃんは

死んでしまっていたかもしれない。


学校に連れて来られた犬女ちゃんは、

案の定、全校生徒の晒し者にされた。

見た目は美少女の犬女ちゃんと

一緒に二人きりで暮らしていた純心には、

羨望、嫉妬、妬み、嫉みといった

負の感情が投げかけられ、

犬女ちゃんは好奇の目に晒され、

猥褻、卑猥な話のネタや噂話にされる。


そうした人々の悪意に晒される純心は、

割れるような頭の痛みに耐えていた。


犬女ちゃんは、

そうした人間の悪意を感じ取っていたが、

怯えることなく、気丈に振る舞った。

純心を悪意から守ろうとしていたのかもしれない。



純心と犬女ちゃんの吊し上げ、公開処刑は、

一学期の修了式後、有志の生徒達による

犬女との共存を考える会と

建前上は称され開催された。

まるで悪い冗談のような会の名前だ。

学校側もこんな馬鹿げた催しを

正式な学校イベントとして認める訳はなかった。

それでも多数の生徒が、野次馬が集まる。


お嬢様と夏希は、純心と犬女ちゃんを

擁護する立場として参加する。

だがその時点で、

男子生徒のほぼ全員が純心の敵となった。


ただでさえ、純心と犬女ちゃんの間に、

性的関係があると疑っているのに、

学校のトップクラスの美女二人がそこに参加し、

まさにハーレムを築いているようなものであり、

心良く思う男子生徒などいなかった。


お嬢様と夏希も、

心ない誹謗、中傷に

巻き込んでしまったことを

純心は申し訳なく思った。

頭が痛いながらも、

まだ、それぐらいのことは考えられた。

今の時点では、まだ。


お嬢様は必死に擁護したが、

人の善意を、優しさを信じることを

信念としているお嬢様にとって、

大勢の人間の悪意は、耐えがたく、

どんどん血の気が引いて、

顔が真っ青になっていた。


普段は男まさりの夏希ですら、

人々の悪意に飲み込まれて行く。



純心は頭の痛みに耐え続けていた。

頭が割れそうに痛い。

頭が真っ白になっていく。

まるで脳がじんじん痺れるようだ。


自分の中の暗い感情が、

どんどん広がって、

全身を汚染していく。

心の底から湧き上がるどす黒い感情、

自分を抑えきれなくなって来ている。


何もかもすべて壊れてしまえ、

ぶち壊してしまえ、

という激しい衝動。

平穏も日常も、他人も、自分さえも。


純心は自分を抑え込もうとするのに必死だった。

理性を失い、暴れ出そうとする自分を、

必死で抑え込もうとしていた。



それは心ない女生徒が壇上で、

犬女ちゃんを非難していたとき。


「その犬女は最初から保健所に

引き取られるべきだったのです!

可哀想だからと何も考えずに

引き取るのは間違っていたんです!」


その一言をきっかけに、

純心は壊れた。

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