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犬女ちゃんと別居(1)

夏希の話を聞いた純心は青ざめた。

犬女と暮していることがばれたら、

自分は学校を退学になってしまうかもしれない。


夏希の話を聞く限り、今回はたまたま

犬女ちゃんのことはばれなかったようだが、

自分が目を付けられている以上、

学校にばれるのは時間の問題だった。



しばらくは、犬女ちゃんの朝散歩も止め、

犬女ちゃんを家から

一歩も出さないようにするしかなかった。


夏希はそれでは犬女ちゃんが、

あまりに可哀想だから、

しばらくは自分の家で

預かると言ってくれたが、

生徒会がいつまでも自分を

見張っているほど暇でもないだろうと、

そこに関しては、少し楽観視をしていた。



だが純心の予想に反して、その後、

純心の家を見張っていると思われる、

人影をよく見るようになった。

学校の関係者なのであろうか。


純心からすれば

気持ち悪くて仕方がなかった。

終始、自分を、自分の家を

誰かに見張られているという状況に、

一人で暮らしている高校生の

メンタルが耐えられるわけはなかった。


今にでも家に侵入者が来て、

何をされるかわからない、

そんな緊張感と不安を抱えて

日々を過ごさなくてはならないのだ。



お風呂当番も週に二回、

夏希とおばさんが

交互に来てくれるだけだった。


お嬢様には事情を話して、

しばらくは朝の散歩も来られないし、

お風呂当番も、来てもらわないほうが

いいだろうと説明した。


お嬢様は心配すると同時に、

せっかくみなと仲のいい

友達になれたのに、

残念だと寂しそうに言っていた。



犬女ちゃんは、

家から一歩も出られない日々に

ストレスをためていたが、

それでも純心と一緒に暮せて

それだけで満足だった。


だが、純心はこの疑心暗鬼の生活に、

心身ともに疲れて来ていたため、

犬女ちゃんを素直に

受け入れられなくなっていた。

どこかぎくしゃくしてしまっていた。


ここ数か月、

二人で仲良く暮らして来て、

お嬢様とも知り合えて、

確かに楽しかったが、


それでも、

こいつがいなければ、こんな目に

合わなかったかもしれないと、

心のどこかで思ってしまっていた。



以前から時々、

何かの拍子に、頭が痛くなって、

気分が悪くなることがあったが、

最近は、頭が痛くなってくることも多かった。


以前も、なにかこんな暗い気持ちだったときが、

あったような気がする。

そう思っていると、頭が割れそうに痛くなる。




日に日にやつれていく純心を

見るに見かねた夏希とおばさんは、

犬女ちゃんを自分の家に

預けるように強く説得した。


今の不安に怯える生活で、

精神をすり減らしている純心に、

これ以上、意地を張り続ける気力はなかった。



犬女ちゃんは何かを察したのか、

純心に抱き着いて、

決して離れようとしなかった。

必死に鳴いて何かを訴えようと

しているようでもあった。


夏希とおばさんと純心の三人で、

必死に説得したが、

人間の言葉がわからない

犬女ちゃんに理解してもらえるはずもなかった。


「このままだと純ちゃんがまいってしまうわ。

今はお互いに離れていたほうがいいのよ。」

おばさんが犬女ちゃんに向き合って、目を見つめて、

そう言ったとき、犬女ちゃんはその手を離した。


言葉が通じないながらも、

おばさんの伝えようとする姿勢に

何かを感じたのかもしれないし、

おばさんの言いたいことが

伝わったのかもしれない。



夜更けに、

周囲に人がいないことを確かめてから、

人目につかないよう、家の裏から、

夏希とおばさんは

犬女ちゃんを連れて行った。


犬女ちゃんは、純心のほうを

何度も、何度も、振り返って、

その姿を確認していた。

クゥーンという悲しげな泣き声をさせながら。



純心は犬女ちゃんを見送る。

『これでよかったんだ。

俺にとっても、

あいつにとっても、

きっと、このほうが

よかったんだろう。』


純心は、以前どこかで、

似たような光景を見たような気がした。

それを思い出そうとすると、

また頭が割れそうに痛くなるので、

純心は考えることを止めた。

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