犬女ちゃんとお嬢様のお屋敷(1)
お嬢様の家を訪れる純心と犬女ちゃん。
その家は本当に立派なお屋敷だった。
移動もお嬢様の家で雇っている
お抱え運転手が、純心の家まで
迎えに来てくれた。
おばあちゃんの家も
田舎の家にはよくある
敷地が広い家であったが、
比較にならないほどの広さだ。
「まるでお城みたいだな」
お屋敷も、日本家屋風ではなく、
西洋風建築で、庭も西洋庭園のようだった。
お嬢様が金髪碧眼であることから考えれば、
当然なのかもしれなかった。
「よくお越しくださいました」
お嬢様は、ロングのドレス風衣装で
純心と犬女ちゃんを出迎えた。
「すごいお屋敷ですね」
「私の所有物ではありませんから」
お嬢様はそう言いながら笑った。
なんとも清らかな美しい笑顔だろうか。
「こんな立派なお屋敷に
住んでいるお嬢様なのに、
獣医を目指しているなんて
あまりピンとこ来ないというか、
結びつかないですね」
純心はお嬢様について感じている
違和感を素直に話してみた。
「私には五人の姉妹がおりまして、
六人姉妹なのですのよ。」
「お父様はよっぽど、
男の子が欲しかったのでしょうね。」
お嬢様はまた女神のような笑顔で笑った。
「私は六人姉妹の中で、
上から四番目なんです。
姉妹のお母様もみんな
それぞれ違っておりましてね。
私のお母さまは、
お父様の三番目の奥さんだったんですよ。」
「姉妹の中でも、
仲が良いお姉様や妹もいれば、
私のことをよく思っていない方もおります。
本当はみんなで仲良く出来れば一番いいのですが。
ですので、私もいつまでこの家にいられるか、
わからないのです。」
「なので私は、
お家の力を借りなくても、
生きていけるように、
自立していけるようにならなくては、
ならないと思っているのですよ。」
「なんだか、立ち入ったことを
聞いてしまって、すいません」
純心はどんなに裕福な
お金持ちの家でも、
それだけで幸せだとは
限らないということか、思う。
「いえいえ、こんな話を人にするのは、
純心さんがはじめてですのよ。」
「今までの学校にもお友達はいたのですが、
みなさまとはあまりそう言ったお話は出来なくて。」
「みなさま良家のお嬢様ばかりでしたから、
お家の恥になるようなことや、
お家の問題を人には話せない
という雰囲気があったのでしょうね。」
「だから、純心さん、夏希さん、犬女さんには、
とっても感謝しているのですよ。
はじめて何でも話せる
本当のお友達が出来たみたいで。」
『やばいな、そんな話されたら、
ますます惚れてまうやろ状態だ』
純心はお嬢様の内面を知り、
ますます惹かれて行くのを自覚した。
純心はどこか他人に対して
感情が希薄なところがあった。
人とちゃんと向き合って
接したことがないと言ってもよかった。
自分のことにしか興味がないというのも違った。
自分のことにもあまり興味がなかった。
むしろどこかで自分のことを嫌っている
自分がいるかもしれないと思うこともあった。
小さい頃の記憶は、
大好きだったおばあちゃんと、
兄弟のように思っている夏希のこと
しかなかった。
高校に入るまでを考えても、
それに母親と今の父親が加わるぐらいだ。
高校の友人である三馬鹿トリオにしても、
友人がいない純心を見兼ねて、
向こうから声をかけて来たのであり、
自分から積極的に友達になろうと
したわけではなかった。
どこかで他人を避けようと
しているのかもしれない。
そういう意味で、お嬢様は
純心から興味を持った
はじめての人だったかもしれない。
それも犬女ちゃんがいなければ、
おそらくは知り合いになることもなく、
まったく関ることもなかったであろう。
「ときどき犬女さんの
お世話をさせていただいているのも、
とっても嬉しいんですのよ。
今まで何も知らなかった私には、
何もかもが新しいことばかりで、
とても楽しいことばかりですわ。」
お嬢様が犬女ちゃんを見ると、
犬女ちゃんはワンと吠えた。
犬女ちゃんもお嬢様のことを、
群れの仲間だと思っていた。
犬女ちゃんは、そのまま
お屋敷の使用人達に
遊んでもらうことになり、
純心とお嬢様は、室内で
試験勉強をすることになった。




