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犬女ちゃんと晩ご飯

「ちょっと、おふくろ、

一体どういうことだよ!?」

純心は家に帰るなり、

母親に国際電話をかけた。


連れて来た犬女ちゃんは、

はじめて見る家を物珍しそうに

キョロキョロ見回している。


「何?どうしたのよ?」

純心の母は平然としていた。


「犬女のことだよ!

なんで家で

引き取ることになってんだよ!」

純心は若干怒り気味だ。


「ああ、それね。

あんたも家に一人じゃ

寂しいんじゃないかと思ってね。

ちょうどよかったじゃない。」


純心の母親

あや子は結構ノリが軽い。


「よくねーよ!

あんな女の子みたいな

犬女と一緒に住んで、

なんかあったらどうすんだよ!」


普通そういう心配は

親のほうがするものなのだが。


「それはそれで、いいじゃない。

どうせあんた彼女いないんでしょ?」


「そういう問題じゃないだろ!」


「あ、それともあんた何?

もう夏希ちゃんと出来ちゃってんの?」


「出来てねーよ」


純心は夏希のことを

兄弟のように思っている。

正しくは姉か妹なのだが。


純心が何を言ってもこんな感じで

軽くあしらわれるだけであった。


「あんた、

国際電話高いんだからもう切るわよ。

あ、犬女ちゃんを

飼うにあたっての注意事項を、

後でスマホにメールしといてあげるわ。

じゃあねん。」


そう言って純心の母親は

一方的に電話を切った。

我が母親ながら、

相変わらず何を考えているか

よくわからん人だ、と純心は思う。



とりあえず夕飯でも食べて

落着こうと思った純心が、

買っておいたコンビニ弁当を

食べようと振り返ると、

犬女ちゃんがすでに食べていた。


「なんでお前が、俺の食ってんだよ!」


指が人間のように

使えない犬女ちゃんではあるが、

口と手を使って

コンビニ弁当を開けたらしく、

床に弁当の中身が散らかっていた。


「お前のこっちだろ!」


コンビニで一緒に買った

ドッグフードを出してやったが、

犬女ちゃんは、

ぷいっとそっぽを向いて、

見向きもしない。

絶対に食べようとはしなかった。


「野良の犬女だと、

虫とかネズミとか鳥とか

捕まえて食うんだろ、

ドッグフードでも

ありがたいと思えよ」


犬女ちゃんは小さい頃から

おばあちゃんに

大事に育ててもらったので、

当然そんなものを

口にしたこともなかった。

こう見えて箱入り犬女だった。


いつもおばあちゃんと一緒のご飯を、

おばあちゃんが、

あーんして食べさせてくれた。

食べやすいように

ワンプレートにしてくれたのを、

おばあちゃんと同じテーブルで

犬食いしたこともあった。


コンビニ弁当を床で

散らかして食べているだけでも、

犬女ちゃんからすれば

相当我慢しているほうなのであった。



「ああ、なんか俺、全くお前と

うまくやっていける気しねえわ」

純心はうんざりして、

テーブルに突っ伏しながらそう言った。


そんな純心のそばに寄って、

大きなくりくりした瞳で

純心を見つめる犬女ちゃん。

純心の匂いを嗅いで、

首と尻尾を嬉しそうに振っている。


そのあまりの可愛らしさに

純心はどきっとする。


『やばい、めちゃ可愛い』


見つめられて

なんだか照れ臭くなる純心。


「ま、まぁ、今日のところは寝るか」



「今日のところはここで寝ろ、な」

犬を飼ったことすらない純心は、

どうしていいかわからず、

リビングのソファで寝るように、

犬女ちゃんに言った。


『これからどうすんだ、俺』


純心は自分の部屋のベッドで

そんなことを考えていたが、

疲れていたのかすぐに寝てしまった。


しかし純心は大事なことを忘れており、

次の日の朝、悲劇を迎えることになる。






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