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犬女ちゃんと初夢

純心が気づくと

犬女ちゃんが目の前にいた。


だがいつもと

どうも様子が違っている。


二本足で立って振る舞っているが

いつもよりもはるかに

動きが自然な感じで

なんだか本当の人間のようである。


よく見ると耳や尻尾もない

手足も人間とまったく一緒。



「純心、今日もいい子だった?」


犬女ちゃんは

純心に声をかけて来る。


『犬女ちゃん!

喋れるようになったのか!』


『いや、人間になったのか?』


純心は喜びのあまり声を出す。


「ワン!」


『あれ?喋れない』


「ワン!」

「ワン!」

「ワン!」


何度喋ろうとしても

「ワン!」と鳴くだけしか出来ない。


「純心、今日はなんだか元気だね」


純心が自分の手を見つめると、

犬の手が目に映る。


そういえばお尻の辺りにも

なにか手のようなものが

ついているような気が。


純心はここでようやく

自分と犬女ちゃんが

入れ替わっていることに気づく。


「純心が元気で僕も嬉しいよ」


『えっ!

犬女ちゃんてやっぱり僕っ子だったの?!』


驚くところはそこじゃない。



『どうしたもんかなぁ』


犬女ちゃんと

立場が入れ替わって

途方に暮れる純心。


とりあえず、

人間になった『犬女ちゃん』は

もう『犬女ちゃん』ではなく、

犬女もとい犬男は自分なので

『犬女ちゃん』のことは

人間女にんげんおんなちゃん』と心の中で

呼ぶことにする。

とりあえずは。


-


『犬男』になった純心。

改めて言葉が通じないことの

不便さを思い知ることに。


人間女ちゃんに

何かを伝えようとしても

なかなか伝わらない。


手が犬で道具も使えないため

人間のように行動することが出来ない。

今は人間ではないため

当然と言えば当然なのだが。


犬女ちゃんも普段

こんな気持ちだったのだろうか、

改めて純心は

犬女ちゃんの心中をおもんぱかる。



それでも

人間の言葉が理解出来るのは

せめてもの救いだった。


人間女ちゃんが

言っていることを

少なくとも理解は出来る。


これで人間の言葉がわからなかったら

どれだけおそろしいことだろう、

目の前の人間が何を考え、

次の瞬間何をされるか

わかったものではない。

それは警戒したくもなるというものだ。


そして、いつもの犬女ちゃんは

人間の言葉が本当にわからないのだろうか、

今の自分と同じように言葉はわかるけど

喋れないだけではないのだろうか、

そんなことを考えてみたりもする。



「いつまで

そんな犬男なんて

飼ってるつもりなの?

ご近所の手前もあるんだから

早く保健所に連れてってちょうだい!」


人間女ちゃんのお母さんは

犬男を飼うことに

反対しているようだ。


言葉がわかるからと言って、

安心出来るというわけでもなさそうだ。


「純心は、僕が絶対に

守ってあげるからね」


こうなると頼みの綱は

人間女ちゃんだけだ。


人間女ちゃんはいつでも

自分のことをとても大事にしてくれる

不安で不安で仕方なくて、

人間女ちゃんにすがりついて

甘えたくもなってしまうのも仕方ない。


-


純心は途中から夢

であることはわかった。

しかしわかったところで

どうしようもない。


夢だとわかっても

夢から覚める方法を知らないので、

いつまでもこの悪夢は続くのだ。


-


「純心、そろそろお風呂に入ろう

最近お風呂入ってなかったからね」


『いや、それはちょっと』


抵抗を示す純心。


「純心はお風呂嫌いだからなー」


お風呂に入るのがまずい理由がある。


最近、ただでさえ人間女ちゃんに

甘えるとき股間がムズムズするのだ。

犬男になってその辺りも

野生的になってしまったのかもしれない。


いくら人間女ちゃんが

優しいからと言って、

純心が股間を大きくしているのを見られたら

嫌悪感を抱くに違いない。


しかし人間女ちゃんは

容赦なく純心の体を

ごしごしとタオルで洗いはじめる。


純心の股間に

人間女ちゃんの手が伸びたとき、

ぴたっとその手が止まる。


「きゃあぁぁぁ!」


股間の異変に気づいた

人間女ちゃんの絶叫。


『ですよねー』


うら若き乙女の人間女ちゃんが

そんなものを見たら

そうなるに決まっている。



保健所に連れて行くと言うお母さんを

人間女ちゃんが説得して、

去勢手術をすることで

なんとか手を打ってもらうことに。


『いやあ、

ちょっと待ってください、

まだこれにも未練がありまして、

なんせまだ未使用なものですから……』


-


純心は目覚めると

変な汗で体中がびっしょりだった。


純心はコワくなった。

確かにコワい夢ではあったが、

それ以上に新年の初夢に

こんな夢を見る

自分の精神構造がコワかった。


『俺、

どこか病んでいるんじゃないだろうか』


-


振り返って

犬女ちゃん用のベッドを

一応確認する純心。


犬女ちゃんは

嬉しそうに笑みを浮かべて

すやすや眠っている。


犬女ちゃんは

鷹が飛んでいる富士山の麓で、

大好きな純心と一緒に

大好きなチョコレートパフェを

山ほど食べる初夢を見ていた。

なぜかトッピングには

茄子なすびがついていたが。






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