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犬女ちゃんとスキー教室(1)

スキー教室、

二学期最後の学校イベント。


厳密には冬休みに入った

直後に行われるため

冬休みイベントなのだが、

実質的には二学期

のようなものだった。


『しかしこの学校

本当にイベント多いな』


来年は純心達もいよいよ三年生、

大学受験もあるというのに

進学校だという割には

勉強以外のイベントが

多過ぎるというのは間違いない。



学校があるエリアや

純心が住んでいるところは

冬の間でも雪が積もる

ような地域ではないが、

車で小一時間も移動すれば

すっかり雪景色が見えて来る。


東京の都心からでも、

二時間弱ぐらいで着く

ようなところでは

雪がかなり積もっている

ということになる。


今まで本格的に

雪が降る地域に

住んだことがない

純心はその事実に驚く。



移動の大型観光バス、

はじめての高速道路体験に

犬女ちゃんは興奮気味。


新幹線のときから

純心は思っていたのだが

結構スピード狂かもしれない、

ハンドルを握らせたら

危ないタイプに違いない。

そもそも犬女ちゃんは

ハンドルを握れないのではあるが。


しかしよく考えてみると、こうして

スキー教室に行く大型バスに

平然と犬女ちゃんが

乗車していること自体に改めて驚く。

周囲もすっかり犬女ちゃんがいる

光景に慣れてしまったためか、

不思議がる者も誰一人いない。

人間の慣れというのは

結構すごいものだ、


-


目的地に着くと

犬女ちゃんは大喜び。

犬の要素が入っているだけあって

大喜びで雪上をかけ回っている。


見渡す限り真っ白な銀世界。

太陽の光が反射して

まぶしいぐらいに

今日は晴天にも恵まれている。


地元の人には

見慣れた光景なのだろうが

雪に馴染みがない人達には

まるでどこかの異世界、

非日常的空間のようにも思える。



スキー場でも犬女ちゃんは

大はしゃぎだった。


スキー場で借りた

子供用ソリに乗って

楽しそうに滑っている。

普段引く係が好きな犬女ちゃんが、

今回は乗るほうで楽しんでいた。


下まで滑って降りて来ると

体育会男子がソリを引いて運んでいる。

どうやらクリスマス準備のときの

犬ソリの一件以来、

犬女ちゃんを乗せた

ソリを引くことに喜びを得る

という特殊な性癖に目覚めてしまった

体育会男子が何人かいるようだ。


その光景を見た小夜子さよこ先生は

やはり見悶えしている。


「さ、さすが犬女さま…(以下略)」


この場合は体育会男子が小夜子先生と

同じ性癖に目覚めてしまったのだから

あながち間違いではない。


しかし体育会男子を

変な性癖に目覚めさせるとは

犬女ちゃんも罪な女だ。


-


「犬女ちゃんも

スキーやればいいのに」


たまたま純心のそばで

犬女ちゃんの様子を

見ていた図書委員。


「しかし、ストックがなぁ」


当然犬女ちゃんの

道具をつかめない短い指では

ストックを握ることが出来ない。


「じゃぁスノボーやれば

いいんじゃないかなー」


夏希はスノーボードで滑るらしく

犬女ちゃんにもと勧めて来た。


なるほどストックが

いらなくて済む

スノボーであれば

犬女ちゃんにも出来るかもしれない。


そう思って純心は

犬女ちゃんを呼んで、

夏希にスノーボードの乗り方を

教えてくれるように頼んだ。


言葉が通じないので

教えるというのも変な話ではあるが

犬女ちゃんと夏希は

妙に通じ合うところがある。


言葉よりも感覚で、

分かり合うみたいなところが

似ているのではないかと

純心は分析しているが、

そもそも純心が勘違いするぐらい

二人はよく似ているのだ、

種族が違うだけで。



案の定、犬女ちゃんは

めちゃくちゃ

スノボーが上手かった。


アクロバティックダンスを

披露出来るぐらいの身体能力は

そもそも最初からある。


四歩足と二本足を

瞬時に切り替えて

使い分けるだけでも

人間には難しいだろう、

そのことから考えてみても、

つまり人間とは

別次元の運動性能を

持っているということだ。


宙を舞って横回転、縦回転、

3D系エア技を連発してみせ、

ゲレンデ中の注目を集め、

人々を沸かせる犬女ちゃん。


『また随分目立ってるなぁ』


スキーが別に得意ではない純心、

犬女ちゃんは夏希に任せて

まったり自分のペースで滑ることにする。


-


午前中は太陽の陽射しが

乱反射してまぶしいぐらいの

天候であったにも関わらず、

午後は吹雪になると言う。

山の天気は変わりやすい

ということだろうか。


犬女ちゃんと

珍しく別行動をしている

純心を見掛けた

生徒会副会長・今生河原こんじょうがわらルイ。


受験を目前に控えた三年生は

普通スキー教室には参加しないのだが、

推薦で大学が早々に決まった彼女は

三年生でありながら

今回のスキー教室に参加していた。


彼女の持ち前の意地悪な性格が

一人でいる純心を見てうずいたのか、

ちょっとちょっかいを

出してみることにする。


「犬女ちゃん、

どこにもいないみたいよ、

さっきあっちのほうで

見かけたんだどなぁ」


犬女ちゃんはとっくに

夏希と一緒にゲレンデを後にし

純心が戻って来るのを

待っていたのだが、

ルイはそんな嘘をついて

純心をからかう。


「どこ行っちゃたのかなぁ」


ルイのいたずらにまんまと

引っかかった純心は

ルイが指さす方向に向かって

慌てて滑って行った。


-


天候が悪くなり

吹雪いて来ているというのに

純心だけが戻って来ていない。


「あたし達、探しに行って来ます」


スキー教室に参加している

夏希、お嬢様、図書委員、

純心のクラスメイト達は

純心を探しに行くことを

剛田ごうだ先生に直訴した。


「ダメだ、すっかり天候が

悪くなってしまっている。

行っても我々も遭難してしまうだけだ。

ここは救援隊が来るのを待とう」


しかし犬女ちゃんは

そんなことはおかまいなしに

吹雪の中を外へ飛び出して行く。


「犬女ちゃん!」


呼び止めようとする夏希。

その声にまったく反応もせずに

視界の悪い吹雪の中に

消えて行く犬女ちゃん。


これ以上、雪が降ってしまっては

純心の匂いが消えてしまう。

そうなればいくら

犬女ちゃんの嗅覚でも

純心を探し出すことが

出来なくなってしまう。


犬女ちゃんは吹雪の中を

純心を探し出すために

ただただ、ひたすらに走り続けた。






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