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犬女ちゃんと東京(3)/原宿・渋谷

※この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・地名とは一切関係ありません。

今回は渋谷近辺にある

某有名私立大学を

訪問することになっていた。


渋谷とは言え、

原宿と渋谷のちょうど

中間ぐらいにあるので、

原宿を散歩しながら

向かおうなどと、

ちょっとした観光気分で

純心は考えていた。


犬女ちゃんも

原宿という単語に

妙に興奮して反応している。

若者の街だから

犬女ちゃんの乙女心が

うずいてでもいるのだろうか。


こいつらはいつも

そんな余裕を

ぶっこいているから

毎度毎度ひどいことに

なるのだが、本人達に

その自覚は一切ない。


-


原宿駅は、また人が多くて

純心は人混み酔いしそうだったが、

前回で若干慣れていたため

なんとか踏みとどまった。


原宿駅に降りた時点で、

犬女ちゃんは

やる気まんまんだった。

電車に乗って来たため、

当然イオちゃんの姿で

来ているのだが、

今にも四本足で

走り出しそうなぐらいに、

純心より前を足早で歩いて行く。


『おぉ、

これはイケるんじゃないか?』


きっと犬女ちゃんの

野生GPSセンサーが発動して

目的地に向かっているに違い。

今度こそ迷うこともなく

すぐにでも辿り着けるだろう。


純心は期待して

足早に先を行く、

犬女ちゃんについていく。



先を急ぎまくった

犬女ちゃんが

ようやく立ち止まる。


『おお、

もう大学に着いたのか?』


純心が期待して目の前を見ると、

そこはクレープ屋さんだった。


原宿のクレープ特集をTVで見て

それを覚えていた犬女ちゃんは

純心の口から原宿という言葉を

聞いたときからずっと興奮していたのだ。


「イオさん?

ここは時間もあまりありませんし、

先にご用事を済ませちゃいましょう。

ご用事終わった後でなんか食べましょう」


しかし犬女ちゃんの目には、

もうクレープしかうつっていない。

目を輝かせてひたすら

クレープを見つめている。

その目が尋常ではなさ過ぎて

お店の人も、なんだこの子は、

的な感じのリアクションに

なってしまっている。



なんとか犬女ちゃんを

説き伏せて連れて行く純心。

犬女ちゃんは再び猛烈な勢いで

早歩きをしはじめる。


『おぉ、今度こそは』


しかし次に

犬女ちゃんが立ち止まったのは

やはりクレープ屋さんの前だった。


『どんだけクレープ

食いたいんだよ、お前』



その後も何回か

それが繰り返された。

今日は犬女ちゃんの

野生GPSセンサーは

クレープの匂いにしか

反応しない日だったようだ。


『この街、どんだけ

クレープ屋があんだよ』


純心のツッコミも

もはや対象が

そっちになってしまっていた。



お陰でまた少し

時間に遅れてしまったが、

今回は無事に大学の関係者に

会うことは出来た。


-


犬女ちゃんは

クレープを食べられなくて、

不貞腐れてプリプリ怒っていた。


普段はとても聞き分けのいい

犬女ちゃんなのだが、

大好物のスイーツのこととなると

若干常軌を逸する。


それでも

大学関係者と会っていたときは

ずっとニコニコしていたあたり、

純心より営業の才能があるかもしれない。


純心は犬女ちゃんのそんな姿を見て

実は案外ものすごく外面がいい

タイプなのではないかと思っていた。



そんな状況で、

今度は渋谷駅まで

二人で歩いて来るのだが。


純心は渋谷駅前の

人混みを見て愕然とする。


『あー、

これは絶対無理だわ』


駅からスクランブル交差点、

そして見える限り一面、

そのすべてが人、人、人である。


とてもではないが、

人でぎっしり埋め尽くされた駅に

突撃する気などにはなれない。



純心は現実逃避して、

犬女ちゃんと一緒に

原宿に戻って

クレープ屋を梯子してしまった。

もちろん犬女ちゃんは大満足だった。






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