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犬女ちゃんと東京(2)/新宿駅地下巨大ダンジョン

※この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・地名とは一切関係ありません。

純心は東京の

繁華街が苦手だった。


純心が住んでいるところも、

東京の中心地から

約一時間半前後なので

それほど

都心から離れている

というわけではない。

しかしその一時間半の中に

越えられない壁が

存在しているのも事実だった。


わずか一時間半なのだが、

純心が住んでいるところは

虫がやたらにデカいし、

ときどきタヌキが

道に出て来ることもある。

おそらく東京都民からは

想像もつかないことだろう。


本当にわずか一時間半の間に

異空間でも通っている

のではないかと思えてしまう。


とはいえ純心は

東京に行ったことが

ないわけではなかった。

母の実家が昔東京にあったので、

むしろ東京には

何度も行ったことがある。

その度に東京への

苦手意識を膨らませて

帰って来ていたのだが。


-


上り電車には、

当然人間に変装した犬女ちゃん、

イオちゃんと一緒に乗った。


電車が駅に着くたびに、

乗客が増えて行くため、

ぎゅうぎゅう詰めに

ならないか純心は心配していた。


犬女ちゃんも毎日

電車で通学しているわけだが、

それこそ田舎の

ローカル線であるため、

すし詰め状態の電車には

まだ乗ったことがない。

無暗に他人と接触したときに、

犬女ちゃんがどんな反応を

するかもわからない。


幸い時間帯がよかったのか

そこまでひどい

電車混雑にはならずに済んだ。


二人は何度か乗り換えをして、

ようやく新宿駅に辿り着く。


-


問題なのは

新宿駅の地下道だ。


新宿駅の地下などは

地下道を含めると、

壮大な迷路もしくは

ダンジョンのようなものだ。


世界的にも

巨大迷路並みとして有名で

泣かされた訪日外国人は数知れない。


方向を間違えると、

本当にまったく離れた場所に

出されてしまうことになる。


ここを東京に慣れていない

純心と犬女ちゃんが

無事に脱出出来るのか。


「よし、犬女ちゃん、

この巨大ダンジョンを

これから二人で制覇するぞ!」


「オー!」とは

犬女ちゃんも言わえないのだが、

二人は意気揚々として進んで行く。


純心も都会への苦手意識を

ここで払拭しようという

意気込みだろう。



しかし、やはり案の定

二人はソッコウで迷った。

新宿の地下道を二人して

右往左往するハメになる。


信じた道を進んでは

かなり歩いてから

また同じ道を

戻って来ることになる。

そんなことが何度も

繰り返される。

焦りと不安で

純心のメンタルは

どんどん削られていく。

変な汗まで

出て来てしまう有様だ。


何か目的地の

匂いでもわかれば

犬女ちゃんGPSセンサーが

発動してくれるのだが、

生憎そんな目印となるような

都合がいい匂いもない。


二人の巨大迷路からの脱出、

ダンジョン探索は

そう簡単には終わらなかった。



意気揚々としていた純心は

いつしか人混みに酔って、

ついに気分が悪くなり、

犬女ちゃん(イオちゃん)に

肩を組んで支えてもらいながら

進んで行くという体たらくだ。


『犬女ちゃんは肉球ぷにぷにを使った!』

『純心のHPはほんの少し復活した!』


まさにそんな状態である。

純心はヘタレると

犬女ちゃんに甘える傾向にある。

これではどちらが人で、

どちらが人ではないのか

わかったものではない。



そして、そもそも

この二人はとんでもない

間違いを犯していた。


新宿近辺にある

某有名私立大学に行くには

そもそもが新宿駅で

降りてはいけないのだ。

完全に降りる駅を間違えていた。


-


ようやく二人が

地上に辿り着くと、

そこはビルが立ち並び

どこに行っても

人混みだらけという

テレビなどでよく見る

大都会そのものだった。


その中を歩いて行くと

またすぐに純心は

ゲンナリしてしまう。


純心が思うには、

どうも東京の繁華街というのは

田舎に比べてどうしても

視覚情報が多過ぎるのだ。


視覚情報が多過ぎて、

まず混乱してしまう。

それで不必要な情報を遮断、

カットして、必要な情報だけを

取捨選択することを

迫られることになる。


それが上手く出来る人は

問題がないのだろうが、

純心はそうした視覚情報の

選択が得意ではないらしい。


そうした繁華街の

情報過多な部分が

人によっては刺激的だとも

感じるのだろう。


そう考えると、

刺激というのはすべて

情報によって

もたれされているように思える。

視覚にしろ、匂いにしろ、味覚にしろ、

刺激的と言われるものは

五感に多くの情報を

もたらすものばかりである。


こうした東京の視覚情報だけで

自分はすでにぐったりしていて、

これが嗅覚や聴覚が

人間の何倍も優れている

犬女ちゃんであれば、

さぞ疲れるのではないかと

純心は心配していたのだが、

犬女ちゃんはケロっと元気そうだった。


純心が思う以上に、

犬女ちゃんのバイタリティ、

環境適応能力は

すごいのかもしれない。


-


繁華街を歩いて行くが、

どっちに行ったらいいのか

よくわからずスマホで調べる純心。


今の時代、会社員で

外回りの営業であれば、

スマホのGPS機能付き

位置情報アプリは

なくてはならない

マストアイテムなのだが、

学生である純心は

そんなことに気づくはずもない。


そこではじめて

降りる駅を間違えたらしいことに

気づいた二人は途方に暮れる。

犬女ちゃんが肩を落として

これだけがっかりしている姿

というもの相当珍しい。


結局二人は再び

あの巨大ダンジョンに

戻らなくてはならない

ハメになるのだった。



そして何時間もかけて、

ようやく大学に着いた頃には

訪問相手である

大学関係者も当然ながら

とっくに帰ってしまっていた。


下調べも出来ていないし、

約束の時間も守れないし、

営業マンどころか

会社務めであれば

クビになっていそうな

レベルの純心。

まだ高校生だし多少は仕方ない。


生徒会長には怒られ、

改めて出直すことになって、

散々の出だしとなってしまった。


前途多難な二人の全国行脚、

そのはじまりでもあった。







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