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犬女ちゃんと高校球児(1)

犬女ちゃんは立ち止まった。

放課後、純心と

日向先生の手伝いで

グランドの横を

歩いていたときだった。


それに気づいて

一緒に立ち止まる純心。

グランドでは野球部が

練習をしている。


部活体験でも世話になったから、

誰か知った顔でもいるのだろう、

純心は最初そう考えていた。


野球部は今年の夏、

地方大会予選で

ベストエイトまで行ったとかで

学校では大いに盛り上がっていた

ような気がする。


一学期のその頃は、

違う意味で純心達も

大いに盛り上がっていたので、

詳しくは覚えていなかったが。


今やっている秋季大会でも

まだ残っていて、

学校のみんなは期待しているようだ。


-


野球というかスポーツ全般に

関心がない純心の認識としては、

そんな程度のものだった。


純心的には、

野球というか

体育会系のノリ

全般が得意ではない、


なぜいつもあんなにも

大声を出しているのか、

まずそこから理解出来ない。

気持ちを盛り上げる

ためなのであろうか?


その割には

怒号とか罵声の類に近い

内容が多いように思われる。


そんな怒られたら、

緊張して萎縮して

しまうのではなかろうか。


そういう奴は

メンタルが弱い奴だと

言うのもよくわからない。

メンタルが弱い奴は

スポーツしたらダメなのか?


あと未だに体罰が

あったりする

という話も聞く。

怒ってカッとなって、

手が出るとか足が出るとか、

そういうのは

他人事ではないので、

とやかくは言えないが、

それを指導と言うことで

容認してしまうと言うのは

どうなのかと思う。


指導者がふるう暴力は

教育的指導であって、

普通の人がふるう暴力は

犯罪というのは

随分とおかしな話ではないか。


純心としては、

いろいろと言いたいことも

あるようだが、とにかく

体育会のノリは苦手だった。



そのときはその程度で

犬女ちゃんと一緒に

その場を後にした。


-


犬女ちゃんはそれから

何度もグランドに行っては、

野球部の練習を

見つめていた。


純心が犬女ちゃんが

どこを見ているのか探ると

どうやら野球部の投手で

エースのことを見ているようだ。


学校の野球部は、

今年の夏、地方大会予選で

ベストエイトに入る大躍進を遂げ、

大いに学校関係者を沸かせた。

その原動力となったのが、

今の二年生であり、

三年生を差し置いて

レギュラーを獲った選手が多い。


中でも二年生でありながら、

エースピッチャーとして

獅子奮迅の活躍をした彼は、

学校から期待の星と目され、

ルックスもよく、

さわやかな好青年ということもあり、

熱狂的なファンである女生徒も多い。


野球部の三年生が引退し、

夏に活躍した

二年生達の代になって、

今年の秋季大会も

ここまで勝ち続けて

来ていることもあり、

このまま優勝すれば

もしかしたら、

春のセンバツで甲子園に

出られるのではないかと

再び学校は盛り上がっている

真っ最中であった。



『も、もしかして浮気?』


純心は多少なりとも

ショックを受けていた。

犬女ちゃんが自分以外の

男子生徒に興味を示すなど

今まで有り得ないことだった。


犬女ちゃんが純心に

気を使っていた

のかはわからないが、

男子に接するようなことを

犬女ちゃんは極力避けていた。


純心は気が気ではなかった。

まさか犬女ちゃんに限って

そんなはずはないと思うのだが、

それでもヤキモキした気持ちに

なってしまうのであった。


男の嫉妬は

みっともないと言うが、

後で純心はそんなことを

考えていたことを

激しく後悔し、

恥ずかしく思うことになる。


-


そんなことが

何度かあって、

犬女ちゃんはついに

保健医である

日向先生を引っ張って

グランドまで連れて来た。


そしてそのエースに向かって

ワンと吠えてみせた。


まだ練習開始前で

準備をしていた

野球部のエースは

犬女ちゃんと日向先生の

ところへとやって来る。


「犬女ちゃんか…、すごいな…」


「あの噂は本当だったんだな…」


野球部のエースは

少し暗い顔をして

そう言うのだった。







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