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犬女ちゃんと文化祭(2)/『忠犬ハチ公』

犬女ちゃんの舞台は、

文化祭の前から、

関係者の間では

相当な話題となっていた。

もちろん学校側が

大々的に触れ回って

いたこともある。


正確にはわからないが、

もしかしたら

史上初のことかもしれない、

そんな話にまでなっていた。


そんな犬女ちゃんの劇を

一目見ようと、講堂は

立ち見も出る満員御礼状態だ。

普通の舞台であれば

大入り袋でも

出ているところであろう。



純心の顔は青ざめていた。

ガールズバンドが

撮影のためにライブをやった

あの大きい講堂が、

立ち見が出るぐらいまでに

人で埋め尽くされているのだ。

緊張で体がガチガチに

なってしまっている。



「もうこれはすでに

大成功と言えましてよ」


「最前列は

大学関係者、教育関係者

といった来賓のみなさまが

大勢座っておいででしてよ」


生徒会長的には、だから

失敗しても問題ないから

リラックスしてやれと

言いたかったようだが、

そんなことを言われたら

余計に緊張してしまう。


思えばここまで、

人から注目されるようなことは

ほとんどなかった。

せいぜい一学期修了式の日、

あのときぐらいのものである。

それがどうしてこうなったのか

と思わなくもない。



犬女ちゃんは、そんな純心の

手を握ってあげていた。

正確に言えば、

自分からは握れないので、

握らせてあげていたというのが

正しいのかもしれない。


純心の掌に

自分の手を当てて、

無理矢理手を握らせたのだ。

純心は落ち着かないのか、

握った犬女ちゃんの手の肉球を

いつまでも指でぷにぷに触っている。


-


舞台袖で、いよいよ開演を

待つばかりとなったとき、

犬女ちゃんは純心に抱きしめて、

背中をとんとん叩いてくれた。


もうどちらが人間で、

どちらが人間ではないのか、

よくわからなくなっている。

犬女ちゃんのほうが

よっぽどしっかりしている。



幕が開き、

舞台に一歩踏み出すと、

そこはスポットライトが

とても眩しい世界だった。

今まで感じたことがないような

大勢の人の視線を感じる。

照明がすごく熱いようにも思える。


緊張してセリフの声も

震えてしまっている純心だったが、

犬女ちゃんはあくまで自然体だった。


それもそのはずである。

犬女ちゃんは演技などしていないのだ。

いつもと同じように、

純心好き好き、それしか考えていない。

そういうお芝居なのだから、

それでいいのだ。


いつもとまったく変わらぬ

犬女ちゃんを見ていたら、

純心も自然と力が抜けていき、

いつもと変わらない

自然体になることが出来た。


純心は、

もはや観客など見ていなかった。

犬女ちゃんだけを見て、

ただひたすら犬女ちゃんを愛でた。


純心と犬女ちゃんの二人が、

舞台で好き勝手にやっても、

他の出演者やナレーションが、

大きく壊れないように、

話を進めて行く構成になっている。

そこは図書委員の舞台構成、

演出の巧みなところでもあった。


観客は舞台上の

そんな二人のとても甘い、

甘過ぎるような日常を見て、

顔をニヤニヤさせながら、

ほっこりしているのだから、

ちゃんと舞台としても成立していた。



犬女ちゃんの

本領が発揮されるのは、

中盤で純心が演じるご主人様が

亡くなってしまってからだった。


そこから先は

犬女ちゃん以外の

登場人物もたいしておらず、

ひとり舞台のようなものだった。






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