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犬女ちゃんとお風呂(2)

純心がお風呂場で悪戦苦闘しているとき、

家の呼び鈴がピンポーンと鳴った。


『ちょっと待て、誰だよ、こんなときに』


はじめは無視していたのだが、

呼び鈴が何度も鳴らされるので、

純心は仕方なく立ち上がり、

お風呂場のドアを開けた。



家の玄関のドアがガチャっと開いた。

「純心いないのー?」

家を訪ねて来たのは、

幼馴染の夏希であった。


「お客さん来るって言ってたのに、ごめんねー」

「お母さんが、お魚いっぱいもらったから、

傷まないうちに持って行ってって」

もう家に来なくていいと、

今日言われたばかりの夏希は、

決まり悪く、言い訳をするように、

玄関の中に入って来た。


今日純心に言われたことが、

気になって仕方がなかったというのもあった。

純心がなにか隠し事をしているような。

女の勘とでもいうのだろうか。


純心の家に来るとき、返事がない時は、

だいたい中まで入っていいことになっているので、

いつものように夏希は、靴を脱いで上がろうとした。



その時、全裸の犬女ちゃんが

突然飛び出して来て、

夏希に飛びついた。


純心が開けた風呂場のドアの隙間から、

さっと逃げ出して来たのだった。


「きゃあああっ!」

突然飛びかかられた夏希は、後ろに倒れ、

その場に尻もちを着いた。


「ちょっと待て、馬鹿犬!」

純心がそう言って追いかけて来た時は、

全裸犬女ちゃんに飛びかかられた夏希が倒れていた。


純心は青ざめた、

犬女ちゃんと一緒に暮らしていることが知られれば、

退学になってしまうため、

卒業するまでに誰にも話さずにおこうと、

今日誓ったばかりであるのに、

いきなり夏希に最悪の場面を見られてしまった。



夏希は、全裸の犬女ちゃんに、

飛びかかられて、

ちょっとしたパニックを起こしていた。


「純心、これ、どういうこと?

お客さんって、こういうこと?」

「ごめん、急に来たあたしが悪かったわ」


夏希は立ち上がると、

落とした荷物もそのままに、

走ってその場を逃げ出した。


「ちょっと待ってよ、夏希!」

純心は夏希の後を追いかけた。

だが、短距離で県大会に出場した

足に追いつくはずがない。


純心を、全裸で走る犬女ちゃんが追い抜いた。

純心は思いっきり吹き出した。

「ちょっと待て、馬鹿犬!

そんなカッコで

うろうろしてたら捕まるぞ!」


住宅街を全裸で走っている犬女が、

誰かに見られれば、

間違いなく通報される。

そうすれば、警察やら、

保健所やらがやって来て、

大騒ぎになってしまう。


純心は仕方なく、

夏希を追うのを諦めて、

犬女ちゃんを家に連れ戻した。


泣きながら走る夏希。

「純心の馬鹿!」

「変態!」

「ドスケベ!」


純心は焦った。

このまま夏希に誤解されたままでは、退学どころか、

二人の今の関係までも壊れていってしまう。

純心にとって、幼い頃の夏希との思い出は、

本当に心の救いであった。

壊してしまいたくないものであった。

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