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犬女ちゃんと探し物(2)

犬女ちゃんが

探し物が得意だという話は

瞬く間、あっという間に、

学校中に広まった。


白ギャル、黒ギャルが、

目の前で見た感動体験を

知合いに会うたびに

話していたら、噂が噂を呼び、

いつの間にか

学校中の話題になっていたのだ。


学校の生徒達みなが

落し物で困ったときは、

気軽に犬女ちゃんに

頼みに来るようになる。



犬女ちゃん、学校では

だいたい保健室で

日向先生と一緒にいるか、

それ以外は純心と一緒にいるので、

特に問題はないのだが、

それでも休み時間や放課後は、

学校内を探し物をして

歩き回っていることが多くなった。


「あ、犬女ちゃん

また探し物してんの?」


校内で偶然会った夏希に、

こんな風に声を

掛けられるほどだ。


-


「犬女ちゃん、ありがとう」


探し物を見つけてあげると、

ほとんどの生徒が喜んで、

笑顔でお礼を言ってくれるので、

犬女ちゃんも嬉しかった。


と同時に犬女ちゃんにとっても、

少し新鮮な部分があった。


これまで純心をはじめ、

夏希やお嬢様、

生徒会長にちびっ子達、

そうした群れの仲間を

助けることは何度もあった。

群れの仲間とは、助け合って

生きて行くのが当たり前だからだ。


だが困った見ず知らずの人を

こんなに大勢助けるというのは、

犬女ちゃんにとっても

かってない体験であった。


広義的には、

社会の人々すべてが仲間であり、

助け合って生きているのだ、

という社会概念を理解するのは、

犬女ちゃんには難し過ぎた。


だからと言って、散歩中などに

目の前で困っている人がいたら

助けなかったということでもないが、

今まで狭い世界だけしか

知らなかった犬女ちゃんが、

見ず知らずの困った人に、

こうして頼まれて、

人助けをするというのは

まったく新しい経験だった。


-


ほとんどの生徒が、

探し物を見つけてあげると

感謝して笑顔でお礼を

言ってくれるのだが、

中には一部心ない生徒もいた。


「この犬女、

探し物には超便利じゃね」


どうせ犬女なのだから、

人間の言葉など

わからないだろうと思って、

見つけてもらったにも関わらず、

お礼も言うこともなく、

犬女ちゃんをそんな風に言う輩だ。


「口に咥えて

持って来たりすんでしょ、

なんかちょっと嫌じゃね?

汚そうだしよー」


犬女ちゃんに偏見や

先入観を持って否定する奴もいた。


「なんだよ、結局

見つからないじゃんか、

使えねえ犬女だな」


犬女ちゃんも

万能というわけではない。

すでに匂いが

消えてしまっている物などは

探し出すことが出来ない。


また、純心と日向先生は、

捜索範囲を学校の敷地内だけと

決めていた。


匂いを辿って行く内に、

犬女ちゃんが学校の敷地外から

外に出そうになると、そこで止めた。

学校の外まで対象にしてしまうと、

際限がなくなってしまう。


それに対して、

不満を言う生徒もいたが、

そもそもが自己責任の話であり、

親切を過剰に要求してくるのは、

さすがに違うだろうと純心は思う。



たいがい、こうした態度を取る

生徒がいた場合は、

純心や日向先生が

一言物申すことになるのだが、

なぜかときどき小夜子先生が

シュババババッ!!と

飛んで来ることもある。


犬女ちゃんは、

相手に喜んでもらえないのは

少し寂しかったが、

それでも純心や

日向先生は頭を撫でて

いっぱい褒めてくれるし、

それだけでよかった。


日向先生は、

犬女ちゃんの頭を撫でて、

褒めてくれるとき、

いつも同じことを犬女ちゃんに

言って聞かせていた。


「いいことをいっぱいするとね、

いつか自分にいいことが返ってくるのよ」


「困ってる人を助けてあげるとね、

いつか自分が困ったときに

助けてもらえるかもしれないわよ」


犬女ちゃんも

群れの仲間は助け合うのは

当然のことだとわかっていたし、

これまでは、ただちょっと

仲間の範囲が狭いだけだった。






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