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犬女ちゃんとお昼休み

いつもお昼休みは、

純心が保健室まで

犬女ちゃんを迎に行き、

一緒にご飯を食べる。


ときどき、

夏希、お嬢様、生徒会長、

もしくは保健医の日向先生が

同席して一緒に食べたりもする。



二学期最初のお昼休み、

校内の学食に行ってみたが、

犬女ちゃんが珍しい、

他の学年やクラスの生徒が集まって、

人だかりの山が出来てしまった。


犬女ちゃんが、

おにぎりを両手で挟んで

持って食べる姿に、

女子達は黄色い歓声を上げる。


「やー、可愛いー」


ペットボトルのお茶を

両手で挟んで持って、

飲むときも同様に

黄色い歓声が上がる。


「ちょー可愛いー」


幸い学校内では

スマホや携帯電話などは

利用を禁止されているため、

写メを撮られる

ようなことはなかったが、

純心からすれば

落ち着いてご飯も

食べられないような状況だった。


まるで動物園のパンダでも

見に来たかのような盛況ぶりだ。


みんなが犬女ちゃんに慣れれば、

当然、落ち着いてくるのであろうが、

まだやはり珍しいようだ。


「よかったら、これ食べてー」

「あたしのも食べてー」

「あたしのもー」

「あたしもー」


女子達は自分達の食事の中から、

おかずを犬女ちゃんに差し入れる。

あっという間に、

犬女ちゃんの前には、

山盛りのおかずが積み上げられた。


犬女ちゃんは

慣れないフォークを駆使して

必死に食べ続けるが、

食べたそばから、また新たに

おかずが置かれていくので、

一向に減らない。


死んだおばあちゃんから、

「出された物は、

残さず食べなきゃダメ」

と人間のようなまともな教育を

受けて育った犬女ちゃんは、

食べ物を残すことを嫌っているため、

結局全部残さず食べて、

お腹がパンパンに膨れ上がってしまった。


『こいつまた、絶対太るだろ』


純心は純心で、

フォークを使うのが面倒くさくなって、

犬食いをはじめるたりしないかと

気が気ではなかった。


みんないくら

犬女だとわかっていたとしても、

目の前で突然、

人間と同じ姿をした犬女ちゃんが、

犬食いでがっつきはじめたら、

おそらくはドン引きされるだろうことを

純心は心配していた。


-


最初にそんな騒動があってから、

お昼休みは犬女ちゃんと

屋上でご飯を食べるようにしていた。


お昼を屋上で食べている生徒が、

やはり多少は居るので、

しばらくは犬女ちゃんに

おかずの差し入れは続いたが、

それでも学食よりはマシなほうだった。


『お母さんがつくってくれたお弁当を

人にやるんじゃあないよ』


親交の証、親切心なのだろう

とはわかっていても、

純心はそう思わざるを得ない。


可愛い犬女ちゃんが

デブになってしまっては困るのだ。

抱っこも出来なくなるし。


-


生徒会副会長のルイも

時々屋上でご飯を食べていた。


一学期に、犬女ちゃんと純心を

窮地に陥れた張本人ではあるが、

彼女の目的は

『純心の退学』ではなく、

『面白いこと』であり、

犬女ちゃんが学校に通うようになり、

ちょっと混乱している今の状況は

そこそこ面白かった。

だから特に何かをしようなどとは、

今のところは考えてはいなかった。


そのうち気まぐれで、

何かトラブルを引き起こすかもしれないが。


-


犬女ちゃんは、

屋上で、青い空の下で、

純心と一緒にお弁当を食べるのが、

学校生活での楽しみのひとつだった。






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