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純心と三馬鹿トリオ

今日から新学期がはじまるのに、

純心は憂鬱だった。

もちろん学校が嫌いとか、

そういうことではない。


一緒に暮らしはじめた犬女のことが、

学校に、みなにバレたら、どうなるかわからない。

下手をすると学校を退学になってしまう可能性すらある。


人の犬女に対する偏見はまだまだ根深い。

それは性奴隷とされて来た長い歴史による。

というのはネットで調べたら書いてあったことだが。


たいがいの人が、若い男子が犬女と

一緒に暮らしていると知ったら、

不純異性交遊とか、

いやらしいとか、

いかがわしいとか、

やましいとか、

後ろめたいことをしている

と考えるのが普通だ。


これから終始、友人や周りの人間に

嘘を吐き続けなくてはならない。

卒業まで嘘を吐きつけられるか、

プレッシャーが半端なかった。



「純心殿、また同じクラスになりました、な」

声をかけて来たのは、友人の『メガネ』だった。

メガネは学校の成績も良くて、頭のいい奴なのだが、

どうにも屁理屈で、癖が強い性格から、

クラスの奴からは敬遠され気味だった。

当然、眼鏡をかけている。


「純くん、ワシもお主と同じクラスですぞ」

次に近寄って来たのは『ドルオタ』。

あだ名の通りアイドルオタクだ。

いろんなアイドルグループの

イベントに行くのが忙しいらしく、

やはり帰宅部である。


「僕も、僕も、よろしく、だよね」

最後が『じゃがいも』。

坊主頭の形がじゃがいもに似ているので

付けられたあだ名だ。

まだ幼い妹が五人もいるため、部活にも入らず、

妹の世話をしている立派な奴だが、

そのためシスコンやロリコンなのではないかという、

あらぬ疑いをかけられている。

本人もまんざら嫌いじゃなさそうなのが、

擁護しづらいところだ。



この三人が純心の友人である

三馬鹿トリオであった。

地味でお世辞にも学園の中心人物とは言えないし、

どちらかと言うとスクールカーストの

下の方に位置する存在なのだが、

それでも三人とも根はいい奴だった。


暗くて人見知りで、

入学から数か月友達がいなかった

純心を見かねて、彼等三人のほうから、

声を掛けてくれたのがはじまりだった。


純心は昔から、他の人に関心を

持つことが少なかった。

もしかしたら、無意識のうちに、

どこかで他人を避けようと

しているのかもしれない。


「みなさん、この春休み、

抜け駆けなどはしなかったでしょう、な」

メガネが張り切って、話の場を仕切る。

「もちろんですぞ」

「だよね」


抜け駆けというのは当然、

彼女をつくったり、

童貞を卒業したりしなかったか、

という話である。


純心は少しドキッとした。

犬女ちゃんとは一緒に暮らすことになったが、

彼女というわけでも、童貞を奪われたわけでもない。

お散歩で知り合った、マドンナ『遥』も、

まだ昨日と今朝の二回会っただけで、

お友達になれたかさえわかっていない、

セーフだ、セーフ、と純心は心の中で思っていた。


いずれにしても、この先卒業まで、

嘘を吐き通さなくてはならないのは、心苦しい。

彼らは根がいい奴らだけに、

純心はそう思っていた。


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