第六話 テメェはこの剣で死ね!!
遅くなりました。すいません。
***
ーー全開のあらすじ。
淡水龍を倒しに河川敷に来た俺は、葛城先輩からの急な告白を受けた。
だが、それは彼女が俺に何らかの試験を実行した形なのだと理解をし得る。
蟹剣士の課題を終えたタロちゃんを待とうと葛城先輩と二人で話をしながら待っていれば、タロちゃんは葛城先輩のことが好きらしい。
そんなこんなで始まってしまった決闘。
ありがち過ぎる展開に少々頭がついて行ってない俺はどうしたらいいのやら。
流石に本気で戦えば、タロちゃんがお陀仏に。
俺、神代光輝は重心を低めにし、彼からの攻撃を上手く避けてそれなりの戦闘をしようと、全力で力を抑えることだけを考えていた。
***
「タクト!!この剣でテメェは死ね!」
彼は剣を自分の右手に召喚すると、右足を前に出し、左足を下げた状態で重心を低くして抜刀の態勢に入る。
「うん、分かった!」
適当な返事を返している隙に、彼は左足を強く踏み込み、俺との間合いを詰めると抜刀速度がやや速めの剣戟で俺を捉えよう。
ーーだが、しかし。
普通の人間であれば、この居合術と剣戟を混ぜた特殊な技に魅了され、決定的な一打を決められてしまう一撃であることは判断出来た。
それでも、やはり彼の攻撃は遅く見える。
俺の能力がハイスペックすぎる故に、だ。
流石に剣からの攻撃をモロに喰らい、出血多量と切り傷を負うのは御免だ。
俺は剣との距離、速度、角度、軌道をしっかりと集中力を咎めた瞳で見極め、回避行動を取った。
スルリとすり抜けるかのように避け続ける華麗なまでのステップは、避け続けられ体力を消耗さえしているタロちゃんの戦意を消失させた。
そして、彼は途中で攻撃するのをやめ、剣を鞘にしまい込んだ。
「流石、速度と回避能力がズバ抜けてるだけあるな。全然攻撃が当たらない…。
でもな、回避をしているだけじゃ意味ないんだよ、やる気が無いなら今すぐ戦士やめろ!
そして、死ね!!」
タロちゃんはきっと、この台詞を言ってその場から立ち去ればハッピーエンドだと思っていたのだろう。
少しだけ棘のある言葉に、俺の身体は自然と動いていた。
「ごっ………ふっ!!」
彼が振り向き去って行く様に追い打ちをかけるような後頭部への回し蹴りは見事なまでに直撃し、タロちゃんを数メートル先に吹っ飛ばしてしまった。
何故だろう?
特に気に障った感じもしない、こともない。
でも、身体が動いてしまうほどの辛辣な言葉でもなかった。
なら、何故勝手に?
夢のことは分からないけれど、
まだまだ覚めない夢にそろそろ、俺は疑問を抱き始めていた。
自分が最強だという世界は、いつもと同じ風景。なのに、何かが違う世界を。
俺は蹴りの影響で軋んだ右足をぼーっと眺め、数分後に吹っ飛ばしてしまったタロちゃんの介抱を葛城先輩と一緒に急いだ。
***
久坂部魔法高等学校の理事長室と表札が出されている部屋には、映像が映し出されている水晶を眺め、独りでに薄ら笑う男の姿があった。
室内は驚くほどに汚く、整頓されていない溜まりに溜まったファイルや資料が机という机を占領し、本来整頓すべき場所である書類トレイには丸まった資料や折れてしまっている資料で溢れかえっていた。
映像が流れている水晶の前には、理事長である男のネームプレートと小さな小箱に入った名刺が目立つように置かれ、此方は不思議にも整頓されてある。
きっと、触れてはいない場所なのだろう。
壁には額縁や生徒が受賞し、取った時のトロフィーや賞状が飾られ、来客用の椅子には何故か学校の旗が無残に置かれている。
隣の職員室からは繋がっている扉に、トントンと手の甲を丸めて叩いたノック音が部屋に響くと、男は野太い声で「どうぞ」と囁く。
男の声に誘われたかのように扉を開いた人物は、丸眼鏡をクイッと上げて口を開いた。
「……理事長、神代光輝が…!
それは映像魔法を取り入れた水晶ですね、何を拝見なさっているのですか?」
「ふふふ。神代君は実に優秀な生徒だよ。
私達の忠告を受け入れなかった時は馬鹿野郎だとさえ思ったけれどね。
さあ、どんな面白い回答をしてくれるのかな?」
突如、高校の近くに雷が落ち、雷鳴と雷光が窓から走った。
暗がりの理事長室に光が灯ったかと思えば、理事長の顔を暗闇から一瞬だけ救い出し、手放した。
神代光輝、彼は一体何者だろうか。
次回…彼はこの世界を知る。
前書きにも書いた通り、更新が遅くなり申し訳ありません。
他の物書きさんの作品が大変興味のあるものばかりでついつい、見入ってしまい、書ける時間が少なくなっていました。
やっと、ひと段落ついたので更新しました。
ブクマ登録や感想等、大変励みになります。
ありがとうございます!!
これからもよろしくお願いします!
ezelu