第五話 テメェ…俺も応援とか…されたいっ!
「……ッ!?
も、もう終わったですか!?」
終わりました。貴方の見届けた世界が正しい世界であってます。
間違いなんてございませーん!
どっかで見たドラマかなんかの登場キャラが言ってたような気がする言葉が頭の上をよぎった。
「ですね、討伐完了です!」
自信ありげに答えると、葛城先輩は何やら不思議な動きで横へゆらゆらと体を揺らしながら笑顔で俺の方へ迫ってくる。
「神代くーん、私と真剣に〜!
お付き合いしてくださいっ!」
は!?
一瞬、自分の耳を疑った。
俺の耳がポンコツのゴミでなければ、付き合ってくださいなんていう意味のわからない言葉が聞こえた気がする。
そもそも、自分のビジュアルはどこにでもいるふっつーの男子高校生で、良いところなんて真面目な部分くらい。
顔もそんなにイケメンではないし、帰って山田太郎の方が地味にイケメンな気がする。
なのに、慎重低いけど可愛いし、なんか魅力のある葛城先輩は俺を選ぶのか!?
コレ、なんていうの?
モテ期!?
ーーと。
数秒、頭の中で色々な言葉が過ぎり、過ぎ去っていくと葛城先輩はいつになく寂しそうで切なそうな表情をしている。
「えーと…なんて答えたら良いのか…」
「……ダメですか?
身長は低いけど、ビジュアルには自信ありますよ。これでも、可愛い方なんです!!」
付き合いたいばかりに酷い自己アピールだ。
もう少し良い自己アピールの文章をお願いだから考えてきてほしい。
俺は考えることをやめにして、率直に思ったことを告げた。
「なんで、そう思ったんですか?」
「んと、強い人だから!
私、守って欲しくて!」
ウルウルとした瞳に負けそうになるも、なんとか踏み耐えよう。
「でも、それなら俺じゃなくても良いですよね。
俺は、先輩のこと、まだよく知らないのでいきなり付き合うってのは流石に……」
「はーい!おっけー!ありがとね!
ふむふむ、神代君は慎重に物事を進めて誘惑にも負けたりしない良い子なんだね!」
!?
次から次へと目の前で起こる彼女の変貌に驚かされる俺だが、何となく理解はした。
要するに、彼女は俺を試したのだろう。
あの適当そうな自己アピールが誘惑になるのかどうかは別だが、最後のウルウルは、一瞬意識飛びそうになった。
「おおおおーーいいいい!!!」
背後から大声で突っ込んでくる男が一人。
彼の名前は恐らく山田太郎。
不思議な程、当たり前の名前だし、昔、小学生の頃とかにあったパソコンの教材とかで名前欄の記入例として書かれていた名前の気がしてきた。
まあ、そんなことは置いておいて。
彼は鉄壁の守りを持つ俺に、全力で殴りかかってきたわけだが、彼のパンチを当たり前のように避けると、すぐに背後に回り込んで強めに蹴り飛ばした。
少し可哀想であるが、彼の行く先は淡水龍の領域。
数秒後、淡水龍に喰われそうになって驚き様に異常な速度での逃走を図った彼は怒りを露わにしたように俺の方へと怒った表情で近づいてきた。
「……遅かったねー。
俺はもう淡水龍倒したよー!」
「遅かったねー、じゃねえよ!!死ね!
何してくれてんだ、テメェ!死ね!」
俺は彼の「死ね」というお決まり用語を軽く受け流すと、用件だけをさっさと言え、さっさと言えー、という眼差しで彼の瞳を直視した。
「はあ……何でテメェが葛城先輩と一緒に居るんだよ死ね!」
ん?これはアレか?
山田太郎な葛城先輩のことが……?
いやいや、そんな普通すぎる展開あり得ないだろ?!
まさか、そんなの誰も望んでないよ。
しかも、こういうのってさ。
決闘とかになってお前より強いところ見せてやるんだっ!っていうバカなキャラがいたりしてーー
「テメェ、四位だからって調子にのるなよ!
絶対嫌な思いさせてやる、決闘を受けろ!!
……好きな女の前で蟹剣士如きに手こずってて遅くなったとか言えねーし、お前が葛城先輩と話してるの見ると、嫉妬しちまったんだよ。死ね!!、死ね!、頼むから死ね!」
ーーやべえ、居たわ。
え、何、そういう感じ!?
俺、面倒臭がり屋じゃないけど、これだけは面倒だと思ってしまうわ。
えええええ!?マジでやるの!?
何勝手に足で長方形を描こうと必死になってんの、マジかよ…!!
てか、これ絶対負けないやつやん。
ヤバイよ、あいつの目マジでヤバイ。
多分頭の中で考えてんのってさ。
「負けてくれ頼む、マジで負けてくれ!
頼むよ、負けて!負けてよ、負けて!
俺勝ちたいよ!形式だけでも!!
彼女の前だけでいいからさ!頼むよ!負けて!死ね!!」
だと思うんだけど、きっと間違いないよね?
「オイ、フィールド出来たぞ。
テメェ、覚悟しやがれ!さっさと死ね!」
足で描いた少し大きめのフィールドの右側に彼は立ち、俺は逆側に立った。
急展開すぎる展開に頭がついていけなくなったのか、葛城先輩は苦笑気味で俺の方を向いて「ガンバッテー」と棒読み気味の応援を向けてくれている。
が、それが彼の火種なんだよ。
今までの会話は俺とタロちゃんの至近距離で行ったものだから、葛城先輩には聞こえていない。
聞こえてたら、タロちゃん発狂するもんな。
「テメェ……応援とか……されたいっ!」
何言ってんだろこの人。
取り敢えず、俺は軽めに戦おうと、必死に体にセーブをかけて彼との決闘に励むことにしたのだった。
次回へ続く。
遅くなりました。すいません!
お楽しみいただけたら光栄です!
次回はいつになるかわかりませんが、ゆっくり書かせていただきます!