第二話 え、自虐?
ーーー前回のあらすじ。
自分に身に覚えのない世界で次々に起こる意味不明な事象。
その一つ一つに突っ込むのがしんどくなってきた頃、俺はこの世界を夢が覚めるまで楽しむことを決意。
取り敢えずと言わんばかりに、自分の部屋を探索していると身体能力表が、出てきて、この世界での自分の能力を知った俺はもう一枚出てきた課題用の紙を手に取った。
ーーー
手に持っている課題が書かれた紙に視線を移す。
「えーと、なになに?」
・夏休み用課題
スライム50体の討伐。
蟹剣士30体の討伐。
淡水龍の討伐。
以上の課題は必ず二人以上で行うこと。
一人で行う場合は細心の注意を払ってからにしなさい。
どうやら、この世界にはRPGゲームの王道モンスター、スライムなどのモンスターが数多く生息しているようだ。
とりあえず、外に出ないことには変わりはないので、俺は玄関から外へ出た。
ーー瞬間。
目の前に広がる光景は、いつになく驚愕的で不思議なものだった。
昼時なのに浮かんでいる赤い月。
太陽がその存在を邪険にしているような、ギンギラと眩い光を発している。
街の雰囲気は極めていつもと同じ。
住宅街にある俺の家の周りには、住宅街ってこともあってか、家しかない。
地味に大きな豪邸ばかりの高級住宅街だ。
家の門を出ると、いきなりスライムに出くわした。
なんで道路に普通にスライムが何匹もいるのかは不明すぎるが、ウヨウヨと動く青い物体は見ていて気持ちの悪いものにしか見えなくなってきた。
俺は武器を持っていないので、素手でスライムをひたすら殴り続けるも、物理属性に強すぎるスライムの体は殴られても殴られても凹んでは戻り凹んでは戻りの繰り返しをしているだけで、ダメージはゼロにほぼ近い。
ただでさえ、火力の無いタンクなのだからスライム一体倒すのに約15分ほどの時間をロスしてしまった。
魔王で倒せば一発なのだろうが、この世界での魔法の使い方がいまいち分からない。
試しに炎魔法を出す程で、「ファイヤー」と叫んでみようかと思ったけれど、他の通行人もいたのでやめておいた。
家の前でそんなことしようものなら通報される自信がある。
俺は素直に物理攻撃のみで地道に、スライムを20体まで狩り続けた。
残り30体は明日にしよう。
そう思い、最後の一体をチマチマと殴っているとーー
黄色と白の閃光が目の前を通ったかと思えば、殴り続けていたスライムに直撃して、スライムは綺麗さっぱり消滅した。
「……あ?
スライムに一番不利な物理攻撃をして頑張ってるやついるなー、なんて思って来てみれば、テメェかよ。
いつもの武器はどうした?」
金髪の尖った髪型に、耳、鼻、口にピアスをしている、きっと同い年くらいの青年が俺に話しかけてきた。
武器の出し方も魔法の使い方も分からない俺には、口が悪くて是非関わりたくない人間だったとしても知り合いであれば好都合!
何となく話を反らしながら聞いていかないと。
「おー、久しぶり!
んと、ちょっとだけ武器見せてくれない?」
完璧だ。
彼はきっとバカだから扱うのは簡単のはずだ。
>>>見た目で人を判断するな<<<
「良いけど、どうしたよ。
テメェらしくもねェ、話し方だしよ。
テンションすらも違う、まるで別人だなオイ。
俺の武器は知っての通り、普通の剣だ。
タクト!」
彼の言葉と同時に、前に出した右手に白い光が紡がれては、だんだんと抑え気味になる光は剣の姿へと具現化されていく。
彼の手には、頭身が銀色で持ち手が金色の刃渡りの長い剣が生成された。
「お前の槌みたいに凄い武器持ちたいんだけどなあ。
なかなかそうもいかねェわ」
俺の武器はすごい?の?
でも、能力も回避、素早さ、防御が上限超えの測定不能の俺は結構、この世界では上の立場の人間だったりするかもしれない。
それは定かではないが、もしそうであるなら今ここで武器を紡ぐことは俺にとって楽しみの1つだ。
「俺も久々に武器出すかな!
タクト!」
俺の言葉と共に紡がれるは、黄色く大きな光。
目の前の青年が生成した剣の時とは明らかに違う光の大きさと眩さに視界を奪われる。
光が土の姿へと具現化していくと、辛うじてその姿を目視することが出来た。
黒く中太い棒状の持ち手に、似合わない程の大きな先端はまるで燃え盛る灼熱の業火を具現化したような厳つさを放ち、先端の真ん中部分には緋色の球体が武器に埋め込まれている。
如何にも、特別な武器であることがわかる構造だ。
「このレーヴァテインは、灼熱の業火から生まれた伝説の一振りのうちの一つだしよ。
テメェが一生懸命頑張って手に入れた最高峰の武器だったな。
クソ羨ましいぜ!」
・レーヴァテイン。
現実では、スルトがラグナロクの時に振るう炎の剣とされている伝説上の武器。
スルト自身の炎とは別とされており、世界を焼き尽くしたスルトとレーヴァテインは関係性があるのかさえも分かっていない。
因みに、スルトを日本語訳すると。
「黒い者」「黒」などになるよ。
因みに、スルトは北欧神話に登場する巨人で、世界終末戦争でムスペルという巨人の一族を率いてアースガルドという北欧神話に登場してくるロキやトールなどの神が住んでいる王国を襲撃して世界を焼き尽くしたとされている者だよ。
ゲームとかだとよく聞いたことあるよね!
この宝玉は何を意味しているんだろう。
何かの力が込められていることは目視するだけで充分理解が出来るんだけれど、その力の解放はどうやるのか、イマイチ分からない。
下手に弄って砕けてしまったら、と考えるだけで怖いので今は、武器の名前と武器がわかっただけでも幸運ということにしておこう。
そう言えば、この金髪少年の名前聞いてなかったな。
どうやって聞こう?
テキトーにどうでも良い話を振ってみるか。
「ああ、そう言えば!
人に自己紹介する時、どんな感じでやる?
ちょっとやってみて!」
「は……?
まあ、良いけどよ。
何だ急になんか気持ち悪ィ」
何とか話は繋げた。
俺の心は安堵した。
「ゴホン。
おー、初よろ。
俺は山田太郎。テメェは?
アァン?ちんけな名前だな。
昔のゲームかよ、気持ち悪ィ」
え、自虐?
「え、自虐?」
「あん?ぶっ殺すぞ、テメェ!!
俺の何処がちんけで昔のゲームにいそうなんだよ、死ね!!」
口悪ッッ!!
そんなに言う!?
豆腐メンタルの人間だったら簡単に崩れ去るわ、この人と一緒にいたら。
「ありがとう!!
これからも末長くよろしくね、タロちゃん」
「だーれが、タロちゃんだよ。
ぶっ殺すぞ!死ね!」
ちょっと渾名をつけて親近感湧かせようとした作戦は有効的だったようだ!
バカは扱いやす……ゲフンゲフン。
「もう夕方だな」
辺りは既に暗くなりつつあり、太陽が沈んでいく姿が見えてきた。
「んじゃ、俺は帰るわ。
また明日、どうせ課題やるんだろ?」
「ああ、やるよ!
よっしゃ!じゃあ、タロちゃんよろしく!」
俺らはそこで解散した。
今日は沢山知らないことが知れて、尚且つ、友達も出来た。
これが夢じゃなくて現実だとしたら、
もう覚めなればいい。
そうとさえ思えるほど、こんなに楽しい生活はないわ。
俺は帰宅して、すぐ、母親の夕飯コールが来るまでは部屋の中に閉じこもっていよう。
そう思って、布団を隠れ蓑のように身体中に巻いてゴロゴロする時は、至福の時だ。
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