第一話 全部、夢だろ?
前回のあらすじ。
気持ちのいい朝に目覚めた俺は、夏休みを謳歌するべく、取り敢えず私服に着替えるためタンスの引き出し口に手をかけた。
が、タンスがどうやっても開かない。
人間の力も筋力も常平凡な俺には、タンスが開けられないなんていうことは生きていてまるで体験など無かった。
そんな時、妹の愛が部屋に、母親の命令で起こしに来た。
妹が目にした光景は、タンスにしがみついて全力で戸を開けようとしている意味の分からない光景。
若干引き気味の妹に言い訳をした俺は次の窮地に追い込まれる。
なんと、母親の野郎が(野郎とか言ってはいけません)妹の服を俺のタンスの中に間違えてしまってしまったようだ。
だが、入っているのは開かないタンス。
俺は彼女に部屋に持っていくということを伝えたが、敢えなく意味なし。
止む終えず、タンスから離れた俺が目にした光景はーー
妹が意図も簡単にタンスの戸を開けている状態だ。
俺は驚愕して驚愕してタコ踊りでもついでに踊ってやろうかという気になった。
もっと驚いたのは、その次に妹が口にした台詞。
「魔力」
ん?
なんだよ、それ!!
厨二病にでも目覚めてしまったんじゃないか?
という、心配を一瞬したが彼女に限ってそれはありえない。
俺は訳も分からず、先ずに、状況を整理して自分が分からないことから説明していくことを決めた。
ーーーというわけだ。
そんなこんなで朝飯、今日の献立は、目玉焼きにご飯、お味噌汁にサラダ(テンプレ中のテンプレのご飯献立)を食している。
目の前に広がる光景には、初回は驚いて、リビングに入ることもできなかったが今は大丈夫だ。
俺はきっと、夢を見てる。
そういう結論に至ったからである。
まず、俺がリビングに降りてから驚愕したことを5つ答えよう。
其の一
「なんで、フライパンと鍋とか物に自我が生まれて勝手に行動してんだよ!!」
一見、言葉だけでは文字通り意味がわからないが、俺の目の前にはそれが広がっていたのである。
空飛ぶフライパンは自分で自分を熱し、卵を焼いて目玉焼きを作り、自立したオタマと鍋は二人?で仲良くラブラブイチャイチャしながら器に味噌汁を注いでる始末。
訳が分からない!!
この一言に尽きた。
其の二
「なんで父さん死んだ事になってるの!?」
リビングのテーブル近くには、
父親の生きていた頃と思われる笑顔で撮っている写真がお線香で立てられていた。
おかしい部分は、それだけではない。
父親の身につけている服が何故かゲームでよく見るような勇者初期装備みたいなことになっているのである。
「やめてくれ!頭のHPは既にゼロだぞ!
オーバーキルはよくない!」
俺の頭は綺麗さっぱり、ショートし、頭のHPがゼロになった。
其の三
「ちょ、メグ、なんで箒乗ってるの!?」
友達と出かける約束があるらしく、
俺が起きた時にそのまま玄関から外に出た妹が手にしたものは箒だった。
外の掃き掃除でもするのかな?
と思って出て行ったメグを暫く見つめていた俺だったが、どうやらそうではないらしい。
メグは、箒の持ち手に跨り、
「準備オッケー!」と小声で呟くなりして、
宙に浮いては颯爽とその場から消えて行った。
え、いや、最近の文庫本でもこんなテンプレ感漂う箒の使い方しないよ!?
魔法少女かよ!!!
其の四
「ちょ、母さんおかしい。
え、何で手から火?
ちょ、近づけないで!熱い!」
台所に立って、料理を完全に家具たちに任せきっている母親は俺を見るなり笑顔で
「ちょっと、タバコ吸うね!」
まず、この時点でおかしい。
俺の母親は酒も煙草も大嫌い。
承諾した俺に笑顔で「ありがとう」と告げると、母親はタバコを取り出し、口にくわえて「手で火を灯した」
え、なに魔法?
さっきメグが口にしていた「魔力」という言葉。
それを今の状況とすり合わせるなり、俺の思考で考えられるのは「魔法」だけだった。
ゲームとかでもよくある「炎魔法」だ。
炎と呼べるのかどうかは別としても、火を出すことが出来るようなので其の部類になることは間違いないだろう。
其の五
「ちょ、ミャー!?
なんで羽生えてんの、猫だろお前!」
そう、ウチの愛猫でミャーと鳴くからミャーと付けた家猫。
黒と灰色のアメリカンショートヘアーという種類の猫だったが、それに加えて今の俺の目の前にいるミャーには白く小さな羽が生えている。
そう、ゲームなどの説明を最初にしてくれるような天使が持っている白い羽だ。
あのふわふわとした感じ、一度触れてみたかったんだよなー。
そんなことはさて置き、と言ってる間に数回は羽に触れてもふもふ感を味わってしまった俺だったが、この時、不思議な感覚に陥った。
夢にしては飯も旨く感じるし、何よりもミャーの触り心地が現実並み。ということ。
其のほかにも挙げられる理由はいくつかあるが、目立った理由はこれぐらいだ。
そして、この五箇所のおかしい部分は俺がリビングに降りてきてご飯を食べているときの十分間に気付いたものである。
外に出ればきっと、もっとおかしなものが見えるのではないか?
そして俺のこの夢はもう少し長く続くのではないか?
考えているだけでもワクワク感が止まらない!
最近、毎日毎日が普通過ぎる生活に嫌気が指していたわけでもないが、完全に指していなかったわけでもなかった。
其のせいか、さっきから胸が小刻みに心拍数を与えてくる。
胸の高鳴り、俺はこの瞬間を今だけ謳歌しようという気になった。
「ご馳走様でした!」
大きな声で手を合わせて、出した声をスタートと認識した食器らは自ら宙に浮いて、流しの為である水の中に入っていく光景を笑顔で見、受け流すと俺はリビングを出ようと椅子から腰を上げて、一歩を踏み出した。
「ちょっと、光輝!
夏休みもそろそろ終わりでしょ?
夏休みの課題、早めに終わらせちゃったんでしょうね?
倒すもの倒しとかないと、成績落ちるわよ!」
倒すもの?
はて、なんのことやら。
とはならなかった。
昔から平凡にはゲームもそれなりにしてきたわけだが、昔にこんなようなゲームをやったことがあるような気がする。
朝目覚めたら自分の生きている世界が丸ごと別の世界になっていて、家族も友達もその世界の住人になっているというような話。
俺はテキトーに返事をすると、
階段を登って、まず自分の部屋を詮索することにした。
もし、コレが完全に夢であるなら夢を覚ます方法のテンプレである頬をつねるとか何か痛いことをしてみるだとか、、、
というのをやれば、事実が嘘かが見抜けると思ったわけだ。
まあ、夢じゃないわけがないし、何とかなるっしょ!
もし、これが夢でなくて、俺の生きている世界が魔法のある異世界になっているのだとしたら心がこれ以上高鳴ることはないが、俺は平凡、普通過ぎる男子高校生。
断言しよう!
まず、ありえない。
部屋を模索すること15分、机の引き出しの中に身体能力表と書かれた紙が出てきた。
もしかするとこれは、この世界の中での俺の強さが載っている紙!
そう思って、紙に目を向けると。
神代光輝の身体能力
※平均は一律で100程。
・攻撃力
物攻:5
魔攻:5
・防御力
物防:9999
魔防:9999
・回避力:9999
・運:0
・素早さ:9999
はあ!?
タンクかよ!!
攻撃力乏しすぎるのに防御と回避と素早さカンストしてんじゃねえか!!
こんなん、ラスボスとか倒そうもんなら一日中体を動かしてまくって地味〜ちにダメージを与えていくしかねえじゃん!!
え?なに、、、?
得意魔法とかあんのこれ…。
神代光輝の魔法能力
※平均は、一律で100程。
・属性魔法
火魔法:5
水魔法:5
風魔法:5
光魔法:5
闇魔法:5
・特殊魔法
治癒魔法:9999
だから、タンクかよ!!
某陣取り系ゲームだったら、チート並みに強いかもしれないけどRPGでもこのステータスは最悪の振り方だろ!!
治癒魔法カンストしてんだけど、
これなにどういうこと!?
平均余裕で達してないよね、属性魔法。
俺の武器?
そういうのも書いてあるのか…!
・使用武器
巨大槌
………そりゃあな!!
火力乏しかったらそうなるわな!!
俺でもそうするわ。
てか、俺か!!
んん、なんか分からんなー。
総合評価……?
んなもん、
Dとかだろ、ゼッタイ!
総合評価
……S……
担当者から一言。
「火力が乏しい部分を巨大な槌で補っていますね。
速度と回避力、防御力が一律に測定不能なので槌を振る速度が大変速いので誰も追いつくことができませんね。
それでいて、治癒魔法は測定不能。
多少の傷も直ぐに治ってしまう不思議な再生能力を常時発動しているようで、極大魔法などの巨大な魔法も無傷で食らうことも多々ありましょう。
大変素晴らしい生徒です。
我が校に入学を決めてくれたことを感謝しています。ありがとうございます。
では、楽しい夏休みライフを ♪」
滅茶苦茶強いじゃん俺!
平凡で普通過ぎる俺にはありあま〜る ♪
能力評価だな。オイ…!
ん?何だこの机の間に挟まってる用紙は……
えと、夏休み課題?
暇だし、やるか…!!
そして、俺は自分の能力値を知り、課題に挑戦していくことになる。
この夢はいつ終わるのだろうか。
そう言えば、夢覚ましのテンプレしてないな。また今度やろか…。
彼は課題用紙を手にとって、ニヤリと微笑んだ。
異世界物語は思わぬ方向に進めていくのが楽しいです。
まだ二話目ですが、これから毎日更新していって楽しく良い物語に出来たらなと思っています!
次回は、新キャラ登場です!
また、Twitterとの提携も行なっています。
@sirokurosan2580 ←ID
更新通知の方は基本的にTwitterにも投稿しているので是非、フォロー等をお願いします。
ezelu