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竜王と黄金のハート  作者: 葉月秋子


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      8 セネカ その4

8 セネカ その4



「肋骨折ったのか?」

「うん、一本だけ。でもあたしの血飲ませたから、親和力ですぐ治るはず」


 ライラは青年の胸を見て、血にまみれた傷口が盛り上がり、治りかけているのを確認する。

 ルオーが呻いた。

「ありがと。ごめんね、ルオー」


 ルオーが苦しげに頭をふる。

 眼を開き、息をしようと喘ぐ。その顔がみるみる色を失って青ざめる。

 手が上がり、喉をかきむしった。

「・・・くる・・・し・・・」

 突然身体がのけぞり、激しく痙攣する。


「ルオー!どうしたの!やだ!ちょっと!」


 歯を食いしばり、激しく震えるルオーに二人は仰天した。

「ルオー!ルオー!」


「医者だ!人間の医者!」

 レイヴンが敷居につまずきながら飛び出していく。


「ルオー!」

 ライラはあわててルオーを抱き上げ寝台に運んだ。


 身体が硬直し、激しく震えながらまた弓のようにのけぞる。


[絶対、内臓は傷つけてない!・・・はず!

 じゃあ、何?あたしの血?]

 ライラは呆然とした。


[あたしの血がルオーに何かしちゃったの?]




「だめだ!医者は近くの村に往診に・・・」

 叫びながらあたふたと飛び込んできたレイヴンの胸倉をがっしと掴むと、ライラは鼻がくっつくほど荒々しく相手を引き寄せた。

「あんた、あの子と寝た!?」


 突然の詰問に眼を白黒させて言葉も出ないレイヴンを必死でゆさぶる。


「答えてっ!あの子、竜と寝た?それとも竜の血を飲んだか、浴びたかした!?」


 竜の血。


 レイヴンの脳裏に浮かんだ幼いルオー。

 シルヴァーンの腕を抱えた、血まみれの。


「飲んだかどうかは知らん。だがちびはシルヴァーンの血を浴びてる。大量に」


「もう・・・最悪」

 つぶやいたライラはレイヴンを廊下へ突き飛ばし、鼻先でばたんと扉を閉じた。


「入ってこないで!」

「おいっ、それがどうしたんだ!ちびはどうなんだライラっ!」



 ライラは必死で冷たくなっていくルオーの身体を揺さぶった。


 声と心で激しく呼びかける。


「頑張って!頑張るのよ!こんな所で死んじゃだめ!

 あんたは生きて、シルヴァーンに会うんでしょう!」


 シルヴァーン。


 その声が聞こえたのか、色を失った唇がわずかに動いた。

「・・・ル・・・ヴァ・・・」

 まぶたが震え、何とか眼を開けようとする。

 熱い涙があふれて青ざめた頬をつたう。


 だがそれだけで力尽き、ルオーは再び深い昏睡に陥っていく。


 身体は冷え切って氷のようだ。死の影がその顔を覆い始める。


「だめ!だめ!死んじゃだめっ!

 あたしのせいで死んじゃうなんてだめよぉっ!」


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