6 セネカ その2
6 セネカ その2
「永久に人間の姿に閉じ込められたと知って、奴は狂った。
人間の女に子を産ませ続ければいつかは竜が生まれると、それを食べれば竜に戻れると信じ込んだ」
「そんな!相手の姿をとっているのに。竜の子など生まれるはずがないのに」
「だから、狂っていたのだよ。
休息期になっても、竜の眠りは訪れない。
しかし寿命は竜のまま、年をとらない。
空を飛ぶことも出来ず、卑小な人の形の牢獄に閉じ込められて、地を這って生き続ける。
狂わないで・・・いられるかね?」
竜達は黙り込んだ。
「狂った奴は女を攫い、竜珠も使わず次々と犯し、子を生ませた。
竜珠を与えずに子を産ませれば母体を損なうことなど構わずに。
娘が生まれると、母を喰らって娘と交わった。
娘を。孫を。曾孫を。生ませては喰らい、喰らっては生ませる。
長い長い間、奴はそうして生きてきた」
ルオーの背に悪寒が走る。
遠い昔、エラに聞かされたおとぎ話だ。
『西のお山に雪が降る頃、片足の人食い鬼がやって来る。
固い義足でコツコツと、子供を攫いにやって来る・・・』
あれは・・・続きは・・・。
『かわいい妹を攫われた、二人の兄が連れ立って、鬼を退治にいきました・・・』
「兄と私は母にかくまわれ、岩屋の暗がりの中で生き長らえた。
その母も喰われ、妹が犯されようとした時、兄と私は剣を取って奴を殺した・・・殺そうとした・・・」
セネカは身を震わせた。
「傷はみるみるふさがる。切り落とした腕も付け直してしまう。
切り刻んでも俺は死なないとわめき続け、落とした首が目玉をぎょろつかせ、呪詛を吐き散らす・・・どうしても・・・死なない・・・」
にたりと笑う。
「食ってしまえば・・・生き返らない・・・三人で・・・奴を喰った・・・」
「・・・だが、奴は死体さえ呪われていたようだ・・・。
数日後、妹は正気を失って崖から身を投げた。
兄は心を失い、人形のようになってしまった。
私も何か失ったようだが・・・はて、何だったのか」
まるで他人事のように、投げやりに言った。




