2 北の地 その2
2 北の地 その2
モールは山国。ロードリアスの北、シンリエンより南に位置するが、標高が高い山々を越えていかなければならない。
隊商の通る道は整備はされているが、冬場は雪と氷に閉ざされ、通行できなくなるという。
「うーっ、寒い!なんでこんな寒いとこで暮らしていけるんだっ」
山道を登りながらレイヴンが耐え切れないように叫んだ。
竜になってひと飛びか、と思ったのだが、竜達は二人とも人型だった。
気を凝縮していたほうが暖かいらしいのだ。
「竜のままだったら尻尾がしもやけになってるぜ」
「これでも活動期になってだいぶ気温が上がったようよ。
魔獣達が見向きもしない国だって、こういうことなのね」
もこもこに毛皮を着込んだライラが言う。
「これじゃ蔦豆も芝麦もろくに育たんだろうに。どうやって食ってるんだ、この国の人間は」
酒を造るだけじゃ無理だろう、という問いにルオーが答えた。
「ええ。厳しい気候の、貧しい国です。
だから、この国の産物といったら、人間。
ラウンドウェルといっていた頃から、この国は出稼ぎの傭兵で有名だった。
父が母を娶ったのも、ラクロア紛争のさなかで、ラウンドウェルの傭兵隊の力を欲したためと聞きました」
八年前、シルヴァーンとルオーを襲った兵士達も、ここの男達だったのだ。
傭兵は、相手を選ばない。支払いさえ受ければ雇い主の命ずるままに動く。
神と呼ばれる竜に刃を向けることでも。
峠を越えると、小さな盆地が見下ろせる。
中央にかたまっている、茶色い石造りの市街。
あちこちから白い煙が上がっている。
「スーリの谷じゃ」
芝麦を運ぶ隊商の男が言った。
「一番南にある、交易の谷じゃ。
こういう谷が繋がって、モールの国を作っとる。
一番奥にあるのが、支配者の住むモールの谷じゃよ。
火の神を祀る、大きな神殿があるそうじゃ。よそ者がそこまで入れることはめったにないがな」




