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竜王と黄金のハート  作者: 葉月秋子


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      17 ギリアス大神官 その1

17 ギリアス大神官 その1



 扉が開き、武装した男が入ってきた。

「仲間はいないようだ」

 ほっとして男たちは尋問に戻る。


 石造りの小部屋の中で、数人の男が衛士の制服を着た一人を囲んでいた。

 手荒に扱われたらしく、ぼこぼこにされて後ろ手に縛られている男は、衛士のアダン。


 男の一人が灯りに近づいた。

「儂を知っているか」

「・・・ギリアス大神官殿・・・」

 平服を着た中年の男に、アダンは頭を下げた。

「王宮の衛士か。ここで何を探っていた?」

「ゆ、幽霊が出るというので、仲間と賭けをしまして・・・」

「嘘をつけ!異端派の手先で、大神官殿をつけ狙っていたのだろう」

「暗殺者、にしては不用心すぎるな。ただの雑魚か」

「衛士、というからには、国王の手の者か?」

「貴族派か?異端派か?答えろ」


 唇を噛んでいたアダンは顔を上げる。

「じ、上官の命令で、神域の不審者を探っておりました・・・」

「ふん、ザンダルーンめ、そろそろ気づきおったか」

 横の男が短刀を引き抜いたのを見て、アダンは慌てた。


「お、俺は衛士です!点呼に遅れたら仲間が探しに来て・・・」

「そして飛狸(ウィンゲラ)に喰われたお前の死体を見つけるのだ。運がなかったな」

「まて、ここではまずい。外でやれ。

 ほっておけば飛狸(ウィンゲラ)が死体を片づけてくれる」

「ひっ・・・!」

 二人の男が両側からアダンを抱え、猿轡をして小屋から引きずり出した。


 見送ったギリアスは居ずまいを正し、仲間にささやく。

「さて。

 あちらから返書が届いた。

 それなりの見返りと引き換えに、我らの受け入れに同意すると」





「ずいぶんと話が違ってきたではないか。ギリアス殿」

「こんなことになるとはな。『水』の」

 ギリアスは苦々し気に言う。

「昼間の蜥蜴鷹(ヒューゲラ)を見たであろう?

 これからああいうことの繰り返しだ。

 竜王を失ってしまっては、もはやロードリアスは終わりだ。

 あくまでも王座にしがみつこうとする、愚王にくれてやればいい。

 我々は北に安住の地を造るのだ」

「見返りか。ラクロアから隠し通した神殿の財宝がこんなことに使用されてしまうとは・・・」

 ギリアスはふと、耳を澄ました。

 護衛たちの帰るのが遅いではないか。

 相手は気付かず、愚痴るのを止めない。

「あの時、そなたが竜王の死体をちゃんと管理していれば・・・」


 パタリ、と扉が開いた。

 だが、入ってきたのは、目深にフードを被った人影。

「・・・やはり・・・あなたの指図か!」

 そのまま、一歩横にずれる。

 そして戸口から。

 巨大な頭が突き出され、ギリアスに襲い掛かり、頭からかぶりついた。

「ひ・ひぇぇぇーーーっ!」

『水』の、と呼ばれた男が悲鳴をあげて腰を抜かす。

 大神官の頭を咥えたまま、頭は素早く引っ込み、ばきばきと枝の折れる音が続く。

 気付くと、フードの男の姿もない。


『水の二位』はがたがたと震えながら、ぽっかりと開いた扉を見つめるばかり。

 ・・・大神官が・・・目の前で喰われた・・・。


「・・・り・・・り・・・竜王・・・竜王様ーーーっ!」

 

 



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