16 竜王神殿 その4
16 竜王神殿 その4
アルムが気を取り戻した時には、月が昇ってきていた。
薄明りの中で、のぞき込む三つの人影。
[に、人間だーっ、た、助かった・・・]
「あら。起きた?じゃ、もうだいじょぶね」
「あのまま別の飛狸にでもやられたら、後味悪いからな」
じゃ、と手を振った三人組に、アルムは取りすがった。
「ま、待ってくださいっ!置いてかないでっ!」
「ん?でも私たち奥へ行くのよ」
「子供は危ないから帰りな」
「夜更けに一人でこんなとこにいちゃだめ」
すっかり子ども扱いされたアルムだった。
「ひっ、一人じゃないんです、同僚とはぐれてっ。
これでもちゃんと訓練を受けた衛士ですっ。
あっ、でもまた槍をなくしたっ!」
慌てて探し回るが、今度は吹っ飛ばしてしまったのか見つからない。
「うっ・・・武器もない、仲間もいない・・・。
飛狸はいるし、幽霊も見ちゃったし・・・。
どうか置いて行かないでぇぇ・・・」
「幽霊?」
本殿で人魂を見た話をすると、三人は興味を持ったのかいろいろ尋ねてきた。
「じゃ、今、上神殿は無人のはずなのか?」
「はい、大量の血で穢された不吉な場所として施錠され、近づくものはいません。
『水』の館と城下の下神殿だけがわずかに機能していますが、竜王様が亡くなり、何度も暴動がおこったために、残された神官たちはほとんど人前に出なくなりました」
聞いた黒髪の男はちょっと考えると、フードを被った仲間に言った。
「どうする?」
「行ってみましょう」
若々しい声が答えた。
本殿は大きな白亜の建物で、柱のある外廊が周囲を取り巻いている。
正面の扉は固く閉ざされ、脇の扉も板を打ち付けて塞いである、廃墟だ。
だが近づくと、外廊のほうにポウと灯が見えた。
点いたり消えたりして見えるのは、間に柱があるせいだ。
誰かが灯りを持って、外廊を歩いている。
びっこをひくアルムを従えて、三人はゆっくりと近づいて行った。
灯りは外廊を回り、神殿の裏手へ。
茂りすぎた植物が建物近くまで押し寄せ、月明かりの下で黒々とした塊となって視界を塞いでいる。
そのあたりで、灯りが消えた。




