12 ロードリアス その5
12 ロードリアス その5
市場で野菜を売っている母に昼食を届けに、家を出たマルナは、激しく打ち鳴らされる鐘の音に立ちすくんだ。
正門の方から、聞こえる悲鳴。
「飛狸だあーっ!」
バサバサと羽音を立てて、黒いものがたくさん飛んでくる。
「逃げろーっ!」
「きゃー!」
マルナは急いで家に駆け戻った。小さな妹のマルカを置いたままだ。
昼寝をしているマルカを起こし、上着を着せた途端、何かが窓を破って飛び込んできた。
翼のある黒い大きな獣が床に転がり、醜い頭を持ちあげ、大きな口をあけてギャー!と叫ぶ。
マルナは悲鳴をあげて、妹を抱いて戸口に駆け寄った。
追ってくる獣から逃れて、外に飛び出す。
空を指さし、走る人々。
「神殿へ逃げろ!」
だれかが叫ぶ。
「マルナ!マルカ!」
「母さん!」
走ってきた母が、二人をまとめてぎゅっと抱きしめた。
「おいで!神殿に逃げるよ!」
お城に近い下神殿に向かって逃げる人の波に加わる。
空にはぎゃーぎゃーと叫ぶ黒い獣がいっぱい。
「火事だ!」
誰かが叫んだ。
ちょうど昼時だったのがまずかった。
あわてた人々が、竈の火をそのままに家から逃げる。
数か所で火の手が上がり、木造の家々に燃え移った。
火におびえた飛狸が、家にぶつかり、路地を走り、出会うものにとびかかる。
石造りの神殿に逃げ込んだ人々は、ほっと息をついた。
だが、高窓から外を見た誰かが、叫んだ。
「何だ。あれは!」
納屋ほどもありそうな、大きな影。
ばさり、ばさりと羽ばたいたそれは、城を囲む石の城壁に設けられた、見張り塔に止まった。
槍で向かった兵士が、跳ね飛ばされて下に落ちる。
ばらばらと矢が射かけられ、兵士たちが城壁の上の通路を走っていく。
「まだ来るぞ!」
見張り塔を飛び越え、城に向かう、怪物たち。
「魔獣の群れじゃ!活動期の魔獣が目覚めたのじゃ!
竜王様!竜王様!竜王様がおられぬ!
ロードリアスはおしまいじゃ!」




