10 ロードリアス その3
10 ロードリアス その3
「あいつ、言わなかったことがあるな」
少し離れてから、レイヴンが言う。
「え?」
「神官たちを虐殺したのは、どっちの兵士かってさ」
「あいつ、あの時『火の一位』直属の兵士を見ているのかもしれない。
案外、あいつ自身がバリバリの異端派なのかもしれないぜ」
ルオーはまだ膝ががくがくしていた。
「レイヴン・・・まさか、シルヴァーンは・・・」
「生き返ったかって?いや、それはない。わずか数日じゃ蘇生は無理だ」
「じゃ、ギリアスじゃない誰かが、どこかに隠したってこと?」
心当たりは一つ。
「セネカ。シルヴァーンを倒した、水の神官」
昔の記録を調べていた。館に出入りしていた。
『水の一位』に引き立てられていた、貧しい神官見習い。
シルヴァーンの心臓を貫いた、レイピア。
あの憎々し気な笑い。
「ギリアスの配下だと思っていた。
でも、彼がシルヴァーンを隠したのなら、なぜ。どこへ」
「とにかく、シルヴァーンの腕を取り戻そうぜ。
考えるのは、それからだ」
神殿付近は寂れているそうだから、もぐりこみさえすれば、人目を避けて動けるだろう。
正門を避けて大きく都を迂回していく。
と、ライラが聞き耳を立てた。
「南の方、騒がしくない?」
手をかざして平原を見たレイヴンが、うなずく。
「空だな。うーん・・・。
飛狸だ。結構な数だぞ」
しばらくして、空にばらまかれた砂粒のような黒い点が、やっとルオーの眼に入る。
すごい、数だ。
「よし。あれが騒ぎを起こしてくれれば、楽に忍び込めるぞ」
「でも、あんなにたくさんいますよ!」
「数は多くても、魔獣とも言えない小物だぜ」
「小さいし筋張ってておいしくないのよね」
竜にとっては小物でも、飛狸は翼ある大型犬並みの身体に、大きなあごとずらりと並んだ牙を持つ。
厄介なのは牙と爪に弱い毒を持ち、ひっかき傷ていどの怪我でもすぐ悪化してしまうことだ。
「槍か松明を持ってれば、たいして手のかかる相手じゃない。
今のうちに裏へ回っておこう」
見張りの兵士たちなら対処できる。
だが、真っ先に狙われるのは。
城壁の外の人々。
追い出された戦い方も知らぬ平民たちだ。
スラムに佇む、裸同然の子供たち。
「おい、ルオ・・・!ちがった、ルー!」
ルオーが正門に駆け戻った時には、何人かが気が付き、空を指さしている。
「飛狸だ!子供を集めろ!
槍と火を用意して、固まるんだ!」




