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竜王と黄金のハート  作者: 葉月秋子


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      7 旅立ち その4


7 旅立ち その4




「竜王を優しいって言う?」


 寝室にルオーを置いて、狩りを取りやめた二人の竜は、朝から酒盃を傾け始めた。


「あのちびは寝惚けてる時のシルヴァーンしか知らねえからな」

 レイヴンが答えた。


「四年も育ててもらって、最後まで庇われて、あの死にざまじゃ、理想化しちまってるのも無理もない。

 あいつが本気で怒ればこの国なんか吹き飛んじまうってことが判ってるのかねえ」


 ライラは痛ましそうに言った。

「早くシルヴァーンを取り戻しましょう。

 急がないと、あの子、壊れちゃいそう」




 結局狩りは次の日に伸ばし、三人はまた、旅を続けた。




 ロードリアスの都まで、あと二日。


 ここまで都に近くなると、宿場も人が多く、警備の兵の姿も見え、治安も良くなってくる。


 街を歩くと、宿のおかみが陽気に呼びかけて来た。


「泊まっていきな、旦那方。うちは料理が自慢だよ。

 旬の蔦豆のスープと、蔦豆のソースをたっぷりかけた焼肉を食べてっておくれ」

 ルオーのげっそりした顔を見てレイヴンは苦笑いした。

 あいつ蔦豆は大嫌い・・・どころか・・・。


「ちび、昨日も蔦豆、食ったよな。おまえ、中毒するんじゃなかったか?」

「食べられるようになりました。好きじゃないけれど」

 下を向いたまま、話した。

「来る日も来る日も、腐ったような蔦豆の粥しか食べられなくて・・・。

 死ぬ気で食べないと、生きられませんでしたから」


 うええ、と声を上げたライラが言った。


「あたしも蔦豆きらーい。家畜の肉もあきちゃった。

 ちょっとだけ竜に戻って、ギャラク狩っちゃだめ?」

「だめ」

 即座にレイヴンが言い返す。

「こんなに人間が多くなってるのに、何言ってるんだ。あんたは」

「んー・・・。

 だって、目が覚めてからまだ食べてないんだもの。

 あの脂ののった、赤身のお肉。牙をたてると吹き出す熱い血」


 ごっくん、とレイヴンが喉をならす。


 脂肪の層が甘いバラ肉。歯ごたえのある腿肉。ねっとり舌にからむレバー。

 舌なめずりをしながら美味しさを語るライラに、とうとうレイヴンは両手で耳を塞いでしまった。

 



平角大牛(ギャラク)と言ったかね?

 あんたたち、冒険者か?仕事はしないのか?

 その平角大牛(ギャラク)の群れを狩りたいんで、人手を集めているんだが」

 後ろから裕福そうな壮年の男が声をかける。


 竜のこととか、まずいことを聞かれなかったか・・・と三人はぎょっとして振り返る。


「あんたたちがギャラクを狩る?

 魔獣の肉はにん・・・あんたたちには固くて食えないだろう?」

 止しとけ、踏みつぶされるのがオチだ、とレイヴンが答える。


「百頭ほどの群れが、わしの農場に向かってるんだ。

 このままでは畑も牧場もやつらに占領されてしまう」

「止めとけよ。あいつらは挑発されたら暴走する。手が付けられなくなるぞ。

 唯一有効なのは、大事なものは火を焚いて囲っておくことだが、群れはあれだけじゃない。

 後から続々と押し寄せてくるんだ。防ぎようがないぞ」


 しかし、北上するのが早いな、とレイヴンは首を傾げた。

 この分じゃ、大型の捕食者が姿を現すのも近いはずだ。


 

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