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竜王と黄金のハート  作者: 葉月秋子


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      12 解放

12 解放



 気を取り直し、青年は城の警備の配置を思い出しながら、部屋を出ようとする。


「おいおい、どっちへ行くんだ」

[ここを出る。一刻も早く]


「あー、ちょっと待ってな」

 レイヴンは寝台に近寄ると、重い緞帳をまとめていた絹の組み紐を解き、手に取った。

 二、三度引っ張って、長さと強度を確かめる。

「んじゃ、こっちから」

 露台のほうを指し示す。


 そうか、五階のここまで外から登って来たのか。

 二人で露台へ出ると。

「んじゃ、いくぜぇ」

 声と共に、背後からがしっと青年のベルトを掴んだレイヴンが、手すりに飛び乗って、露台から飛び降りた。


 丘の上の、城の、五層から。

 眼下に広がる、城下町。

「うわーーーーっ!」

 落下する背中側から、ぶわっ、と熱と圧力がかかる。

 と、ぐうーっと身体が持ち上がった。

 ばさり、と両側で風を捕らえる、黒い翼。


「どうだ!俺様の雄姿は!」

 と、叫ぶ声の後から。

「んー、やっば、持ちにくいわ」

 と、突然、体が空中に投げ出された。

 視界がひっくり返る。

「わ・あ゛あ゛あ゛ーーーーっ!」

 放り上げられ、落下したのは、固い背中の上。

 喉元までせりあがった胃袋と傷の痛みにのたうつ。

「あー、悪い悪い。怪我してたんだっけ。だいじょぶか?チビ」


[・・・☆・・・☆・・・☆・・・]

 大丈夫なものか。

[・・・☆・・・こ  え・・・な  ん  か・・・で  る  か・・・]


 目の前に星が飛んでる。頭の中真っ白。


 ほれ、と絹の組み紐を渡される。

「手綱にするか、落っこちないように腰に巻いとくかしとけ」


 恐る恐る、青年は向きを変え、吹きつける風の中で半身を起こす。

 温かい、安定した、背中。

 自分は今、竜に乗って空を飛んでいる。


「んじゃ、少しとばすぜ」

 竜は高度を上げて、北へ向かう。


 北へ。


 ロードリアスへ。


 シルヴァーンを取り戻すために。



 若者は笑った。


 空飛ぶ竜にまたがり、開放感に満ちて、心の底から、朗らかな笑い声をあげる。


 そして、しばらくしてから。

 ルオーは、自分が声を取り戻しているのに気づいたのだった。


 

 

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