5 活動期 その5
5 活動期 その5
「ジャンサの砦が消えた?」
文官のジョハラは古なじみの武官マックルーに詰め寄った。
「いったい、どういうことだ?」
「わけがわからん。もう、連絡が途絶えて三か月にもなるのだ。これから調査に向かう」
「私も連れていけ!」
「いや、文官の同行は・・・そもそも、お前、馬に乗れたか?
十日以上も馬の背に揺られ続ける強行軍だぞ」
ぐっ、とつまったジョハラの肩を叩く。
「任せておけ、戻ったら真っ先に結果を知らせてやるから」
二十日ほどして、首都から派遣された一行は、南領の小さな村に着いた。
少し南に下っただけで、気温は数度上がり、馬も革鎧の兵士たちも大汗をかいている。
「水分の補給を絶やすな。熱射病で落馬するぞ」
村にたどり着いて、水を補給したい、と言うと、供出されたのは、普通の数倍もあるマコーの果実。
岩狼などが増えてはいるが、ここ数年農作物が豊作続き。以前の二、三倍の収穫量なのだという。
「獣の害さえなくなれば、暮らしは豊かになったのですが」
村を囲む防御柵の補強を急ぐ村長が、心細げに言う。
ここから南に馬で二日の距離にある。ジャンサの砦。そしてその近隣の二つの村。
そのどちらとも連絡が取れなくなっているのだ。
「明日、ジャンサの調査に向かう」
その、ジャンサの砦は、噂通り、跡形もなかった。
いや、よく見れば。跡はあった。
羊歯に隠れ半ば地面に埋もれた木柵。つる植物に覆われた緑の塊は崩れた見張り塔の名残り。
繁茂する植物の下で朽ちていく建造物。
馬の蹄が、かつん、と金属の物を蹴った。
「いったい・・・何があったのだ・・・」
丘の上から見渡せば、遠く緑の野に牛の群れが草をはむ、なんとも牧歌的な眺め。
いや。
その一頭が、易々と、大きな樹木を引き倒した。
マックルーは唖然とする。
縮尺を、間違えている。
大きさが、違う。
あれは・・・。
斥候の兵士が駆け戻り、叫ぶ。
「隊長!あれは、山叔父の群れです!」
すさまじい風圧と共に、その兵士が馬ごと消えた。
残った馬たちが、恐怖の悲鳴を上げて暴走する。
必死で鞍にしがみつき、手綱を引くマックルーの耳に、誰かの叫び声が届く。
「り・・・竜だーーーっ‼」




