4 活動期 その4
4 活動期 その4
ラクロアの首都、ロアヌークにほど近いヌメル公爵領。
領地はそれほど大きくないが、公爵の趣味に飽かせて造られた、設備の整った闘技場が名物で、興業のある日は貴族階級から平民まで、刹那的快楽を求める大勢の観客でにぎわっている。
いきおい、闘技場関係の業者、専属の商人など、従事する人々の数も多い。
近くには剣闘士養成所、獣の飼育場、奴隷市場などが立ち並んでいる。
しかし肝心の公爵が城にいることはほとんどなかった。
興行のある日以外、郊外の別邸に取り巻きたちと籠りきりだという。
そこでささやかれる、暗い噂。
奉公に出て帰ってこない娘。些細な咎で切り殺された従僕。行方不明になった子供たち。
別邸地下の、河に繋がる秘密の落とし戸。
その別邸の通用門から出た荷馬車が、闘技場の裏口に止まった。
鎖に繋がれた数人が降ろされ、公爵専属の奴隷頭に引き渡される。
「こいつらを奴隷房へ。次の興行で戦わせろ。それからこいつは」
一人だけ別に繋がれていた奴隷を降ろす。
痩せた少年の身体が、壊れた人形のように地面に投げ出された。
「公爵の勘気を被った奴だ。よほどあの方を怒らせたらしい。
生きたまま獣の餌にしろとのおおせだ」




