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竜王と黄金のハート  作者: 葉月秋子


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      3 活動期 その3

3 活動期 その3



 ラクロアの王都ロアヌーク。


 王家の資料室で調べ物をしていた文官ジョハラは、ほうと息をついた。

 建国七十年の新興国家ラクロアは、ここに至るまで幾多の戦と政変を乗り越えてきた。

 その結果が、武官がはばをきかせる軍事大国。

 文官は軽んじられ、過去の記録を保存する努力などをしなかったのだ。


 「活動期」とは、何なのか。


 百年ごとに繰り返される。魔獣の大発生。世界は竜に支配され、卑小な人間はただ逃げ惑うのみ。

 民間の口伝はあっても、公式の記録として残っていない。


 どんな獣がどれほど出てくるのか。有効な武器はないのか。

 伝承を信じぬ軍部に、どのように準備を進言すればよいのか。

 

「どんな具合だ」

 古なじみの武官、マックルーが顔をのぞかせる。

「議会に提出出来るような資料があったか?」

 建国史もろくに作っていないような我が国に、百年も前の記録があると?」

 ジョハラは苦々しく答えた。

「一番古い記録は、やはりロードリアスにあるものだが。

 だが、竜を神とあがめる異国人の言う事がどこまで信じられるものやら」

「あの狂信者どもめ」


 ときおりロードリアスから流れてくる、流民たちがいる。

 ぼろぼろの神官服をまとった集団が、世の終わりだとわめくのだ。

 ラクロアが竜王様を弑したために、人間世界は滅びるのだ。

 魔獣の天下がやってくると。

 潰しても潰しても、湧き出してくる流言飛語に、人々の不安はつのる。


「ここで腐っていてもしかたがない。闘技場にでも行って気分を変えないか」

「そうだな。獣使いなら、魔獣のことにも詳しいかもしれん」





 ラクロア南部の砦、ジャンサ。


 雨が多く湿度の高い今年は草原の草が例年になく茂り、大人の姿が隠れるほどだ。

 その草原が、ざわざわと波打ち始める。

 知らせを受けた隊長が見張り台に上って、荒れる大海のように揺れ動く草原を見つめた。

 草原の途切れたあたりから、小さな生き物が走り出てきた。

洞鼠(ルーグ)?」

「草原猫!岩狼も!」

 無数の生き物が飛び出して、生きた絨毯のようにこちらへ向かってくる。

 

 眼を上げた隊長は遠方を見つめ、目をこすってさらに見つめ直した。

「地平が・・・動いている・・・?」

 



 

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