第五章 1 活動期 その1
第五章
1 活動期 その1
ロードリアスの南東に位置する、豊かな穀倉地帯を抱えるローレル侯爵領リドラム。
ラクロア軍との交戦から数年。
ロードリアス、リドラム、ラクロアの三つ巴の争いは、何度か小競り合いがあった後、膠着状態のにらみ合いが続いていた。
戦への不安、活動期への不安、竜王の加護を失った不安に落ち着かぬまま、庶民の日々の暮らしは過ぎていく。
「なんだこのワイン!酸っぱいじゃねぇか」
涼し気な日よけのアケビ棚の下、岩狼の毛皮と交換にワインの小樽を手に入れた若者が、一口飲んで不満の声を上げる。
「高温と長雨でブドウの出来が悪いんだ。いやなら飲むんじゃねえや」
腕まくりした親父が不機嫌に怒鳴る。
黒髪の若者はふるふると頭を振った。
「暑いとワインの出来が悪くなるのか?これからどんどん暑くなるんだぜ。まいったな」
見事な毛皮に手を触れた狩人が、声をかける。
「にいさん、腕がよさそうだな。飛狸狩りに加わらないか?」
若者はにっ、と笑って答えた。
「悪いな。俺は人探しをしてるんだ」




