表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜王と黄金のハート  作者: 葉月秋子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/143

      7 ホーン その7

7 ホーン その7



[今日に決めよう]


 少年はまだ少し足を引きずりながら、空き地の中央に進み出た。

 痩せた体に残る大きな傷跡が痛々しい。


 どれほど時が過ぎたのだろうか。

 シルヴァーンを失った時、肩に届かなかった切りそろえられた薄い色の金髪は、背の半ばまで伸び、獣の白いたてがみを編んだ紐でひとつにまとめられていた。

 着ているものは前より少しまし、程度のぼろ布一枚。

 食べ物と一緒にいつの間にか置いてあったそれは、少年本人と同じように河から引き上げられたもののようだった。

 破れたぼろだが、虫よけの薬草と泥をすりこんで洗っているので、清潔ではある。

 エラのハーブ畑で一緒に過ごした時の知識が、思わぬところで役に立っていた。


 空き地の中央に立ち、姿の見えない相手に呼びかける。

 声は出したくなかったが、心を繋ごうとすれば、もっと嫌がられるだろう。


「助けていただいてありがとうございました」

 少年は目上の人に話すように丁寧に呼びかけた。

「もう、大丈夫です。僕は行きます。

 僕の大切な人を取り戻すために。

 どっちへ行ったらいいのか、教えてくださいませんか」


 空き地は静まりかえり、小鳥の声が響いてくるだけ。

 だがしばらく待つと、藪の一部ががさがさと揺れた。


 見事な獣が姿を現す。


 純白の毛並み。乳白色の螺旋。輝く黒い瞳。

 この世のものとも思われぬ美しさに、少年はため息をついた。

 だが一歩踏み出すと、獣は藪に消えた。


 ちょっとまごつく。

 人里だと思っていた方向とは、逆なのだ。

 だが、すぐに気を取り直し、後を追う。

 藪をかき分けると、かすかなけもの道が森の奥へと続いていた。



 何日も、森の奥へ、奥へと少年は歩く。


 人間以外の者の意志に従う事に慣れていたので、美しい案内者の意図を疑う気持ちはまったくなかった。

 美しい獣は、道を示す時以外、姿を現さない。

 だが離れることなく、近くを歩いているのがわかる。


 果実を、木の実を与え、水場へ導き、少年が辿るべき道を示す。

 けっして近づかない、触れさせない、誇り高い獣。


 何日歩き続けたのか、もう数えるのをやめた頃。

 森の樹々が、少し幹が細く、若いものになって来た。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ