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竜王と黄金のハート  作者: 葉月秋子


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      4 ホーン その4

4 ホーン その4


 熟れた果実の良い香りがする。

 だがそれは、喉が渇いた少年の手の届かぬ場所に転がっていた。


 誰も来てくれない。

 渇きに耐えられず、少年は痛みをこらえ、手を伸ばす。

 届かない。


 歯を食いしばり、体を持ち上げてにじり寄った。

 気が遠くなる。長い時間をかけ、這いよっていっぱいに手を伸ばす。

 だがひなたにずっと置かれていた果実は熟れて腐り、指がかかるとぐしゃりと潰れた。

 気力の尽きた少年は手を伸ばしたまま意識を失う。


 ぐったりした体が持ち上げられ、無理のない姿勢に戻される。

 滴る果汁を意識のないまま少年は受け取っていた。


 渇きに目覚めると、またマコーの実が置いてある。

 目の前の、手の届かぬ位置に。

 また、あそこまで這って行かなければならない。

 あの獣が怒って、意地悪をしているのだろうか。

 悔し涙があふれてくる。

 だが、泣いてもどうにもならない。

 痛みと悔しさに泣きながら、少年は動き出した。




 獣はあれから姿を見せない。

 だが、目覚めると、どこかに果物が置いてある。

 水気の多いマコー。香り高いフドラ。滋養に富んだミルカ。ねっとりと甘いギー。


 どこか、動かなければ届かないところに。


 日ごとにその位置が遠ざかる。

 痛む体を引きずって、這って届く処。

 膝をつく処。立ち、そして手を伸ばさねば届かぬ処へ。


 すぐに見つければ少年の勝ち。腐ってしまったら負けとなる。 

 体が回復していくにつれ、それは次第に楽しいゲームとなっていった。


 

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