番外 シム 七年後
番外 シム 七年後
雑貨屋の前に荷馬車が止まる。
パルに抱き下ろされた三人の子供たちが、飴玉目当に歓声を上げて駆け出して行った。
七年のうちに河は水量を増して広がり、岸辺の船着き場は三度も作り替えられて、その姿を変えている。
丘の上の砦は、三年前飛狸の群れに襲われた壁の修理が滞り、崩れた個所を板材で仮に塞いだままだ。
髪に白いものが増えた雑貨屋のおかみが、にこにこしながら子供たちを迎え、一人ずつ頭をなでて、蜂蜜色の飴玉を配った。
「親父さんの腰はどうだい」
「すこし楽になったみたいだ。
まったく、年を考えずに無理するんだから」
答えた若者は担いできた芋の袋をどさりと店先に置いた。
その両手には、小さな焼き印の跡がある。
「注文の芋三袋と羊毛一袋」
「ご苦労さま」
踵を返そうとした若者に、おかみが声をかけた。
「おまち、子供たちに字を教えたいって親父さんが言ってたろう?
つぶれた寺子屋の備品が手に入ったから、もってっておくれ」
数冊の本と紙類が入った木箱を奥から出してくる。
さんざん使い込まれた古本と紙束を受け取った若者は、一緒に入っていた小さな額に気付いた。
軽く彩色された、木版画。
神官服を着た、青い目の子供の肖像。
「これは・・・」
「ん?ああ、皇太子さまだね。
あの戦の前に、病気の子供のお守りに飾るのが流行ったんだよ」
「皇太子・・・」
「竜王様のご加護を受けた、ロードリアスの王子様さ」
シムは根が生えたように立ちすくむ。
「ロードリアスの王子・・・」
「あの戦で亡くなったんだ。お気の毒にね。
生きてりゃロードリアスの国王様になられたはずなのに」
澄み切った青い目。
強いものは弱いものを守らなきゃいけないと言った少年。
小さな子を見捨てて逃げられないと言ったやせっぽち。
「・・・王様だ・・・」
「ん?」
「あの子は王様だったよ・・・王冠なんかなくても・・・。
俺たちは、ロードリアスの最後の国王様に助けられたんだよ・・・」




