7 シム その7
7 シム その7
「奴隷を渡してもらおう」
小男が詰め寄る。
「治療中じゃ」
老人が突っぱねる。
「やっと骨を接いだところなんだ。二、三日は動かせないよ」
おかみが説明する。
「手当なんぞ頼んじゃいねぇ!人の持ち物を横取りしやがって!
奴隷を生かそうがぶち殺そうがこっちの勝手だろうが!」
「ラクロアならな。ここロードリアスでは過度の虐待は違法じゃ」
「ラクロアが戦に勝ったんだぜ!いまさら何をぬかす!」
「そりゃ都の話じゃのう。法が変わったと、こんな片田舎まで役人が触れに来るのはいつのことやら。
それまでは、己の住処は己で守るしかなかろう。
この船着き場を守るのは?わしじゃ」
剣の柄頭に手を置き、老人は胸を張る。
「ここで騒ぎは許さん」
「ばっ・・・ばかなっ!
俺たちは被害者だぞっ!あの馬車が・・・」
「わしなら文句は言わず引き下がるがな」
老人は声を低くした。
「相手が悪かったな。あれは肉屋の姪の馬車じゃ。
専用の屠殺所を持って、丘の砦に肉を卸しとる大店よ。
兵隊に顔がきくし、屈強な使用人をたくさんかかえとるぞ」
ぎくり、と顔色を変えた小男に畳みかける。
「あいつは置いていけ。弱っちいガキどももな。ただでとは言わん。まとめて銀貨一枚で買ってやろう」
「なにをっ!あいつなら銀貨五枚はするっ!」
「今歩かせたら確実に途中で死ぬな。なに、いやならいいぞ」
老人はにやり。と笑う。
「おまえんとこの奴隷のおかげで馬車の荷が崩れたと、肉屋に言っておくからな」




