4 シム その4
4 シム その4
人を信じて得したことなんか一度もない。
兄貴たちは俺をぼこぼこに殴って、市場で肉をかっぱらわせた。
ちんけなコソ泥は、パシリの俺を警邏隊の前に突き飛ばして逃げやがった。
二つ目の焼き印を押した刑史は俺の額をはじいて言った。
「三度目はないぞ、小僧。ここに印がついたら、即鉱山送りだ」
だから堅気になれってか?
盗人の印を二つも付けた俺を、だれが雇うっていうんだ?
腹ペコでふらふらになってたら、突然戦争が始まっちまった。
逃げ出す商人の馬車からパンをかっさらおうとして、つかまって叩きのめされた。
だが突き出そうにも警邏の兵なんてとっくに消えている。
たたき殺されそうになった俺を、三人の男が買い受けた。
クズリ、アナグマ、イタチ。
名前など誰が覚えるもんか。
俺に足かせをはめながら、奴らは俺を買ったのはその手の印のせいだと言った。
「印持ちは、まっとうな暮らしなんか出来やしねぇ。
俺たちがしっかり鍛えてやるからよ」
にらみつけた俺に、イタチが鞭を振り下ろす。
「まずはこれだぁ!ご主人さまをおぼえとけ!」
俺はガキの群れの世話を任された。
買ってきたのか、攫ってきたのか、ぴいぴい泣く十人のガキを引き連れて、ロードリアスを出るんだという。
紐でつなぎ、食い物を分け、泣いたらひっぱたいて黙らせる。
そしてひたすら、歩かせるんだ。
泣いたらひっぱたく。転んだらひっぱたく。態度が悪けりゃ、食い物は抜きだ。
どうせ目的地に着いたら、俺も一緒に売り飛ばされるんだ。
だけどチビどもが俺を怖がってびくびくするのは、ちよっぴり気分が良かったんだ。
そう。あいつに会うまでは。




