3 シム その3
3 シム その3
「二日も足止めされてちゃ埒があかねぇな」
脂ぎった灰色の髪と鋭い目をした年長の男が言った。
「ガキどもの餌も底をついちまう」
「ほかに道はないのか」
「川沿いに下って峠越えだな。
だが道は険しいし、関所がやっかいだ。
ここと違って常備軍が詰めている。
上玉を残して間引いたほうがいいかもしれん。
あのでかいのが存外使えなかったからな」
「まったくだ。印持ちのくせに、意気地がねえや」
一番力の強そうな奴隷を選び、他の奴隷を監視させる。
それが彼らのいつものやり方だった。
一人だけ仲間から引き離し、贔屓してやるのだ。
食い物を与え、他の奴隷を支配し、折檻する事を許す。
仲間の憎悪は裏切り者のその一人に集中し、孤立したそいつは、商人の手下になるしかなくなる。
だが、今回は当てが外れたのだ。
「包帯をかえるから、バルをおさえてて」
「薬草も効かなかったのか」
「擦り傷くらいなら効くんだけれど、踏み抜いて折れたとげの先が、深いところに残っているんだよ。
切開して取り出したほうがいいんだ。
その雑貨屋の女将さんに診てもらえないかな」
「無理だな。奴ら、野営地の使用料を払わされて機嫌が悪いぜ。
また鞭をくらうだけだ」
ルーと呼ばれた少年の指示に従って、べそをかく子供の肩を押さえた大柄な少年。
その両手の甲には一つずつ、小さなやけどの跡がある。
盗人を表す焼き印だ。




