2 シム その2
2 シム 2
宿の前でのんびり足を投げ出して休んでいるむさい爺いが声をかけてきた。
「小僧、その子はお前の弟か?」
うるせえくそじじい。と無視しようとして、あいつの言ったことを思い出す。
「違う。パルは足を怪我してんだ」
ぶっきらぼうに答えると、爺いはうなずいて続けた。
「雑貨屋のおかみが治療師をしとるぞ」
そうか。
シムは返事代わりにうなずいた。
ちゃんと答えれば、良いことも教えてもらえるんだ。
背中の子供を背負い直す。
「歩けるように手当してもらえねぇかな」
ぱしり、と後ろで竹鞭がしなった。
「よそ見しねえで、さっさと歩け!」
子供たちを船着き場に追い立てて、奴隷商の一人が船賃の交渉に向かう。
老人がうっそりと立ちあがって、近づいた。
「しばらく船は出んぞ」
後ろから声をかける。
「なんだと?」
居丈高に振り向いた男は、老人の軍人風のいでたちと佩剣を見て急に腰を低くした。
二十年も前の古びた軍装だが、まあ、箔付けにはなる。
「上流の雨で水位が上がっとる。二日は船を出せんそうじゃ。
野営するなら、一晩銅貨二十枚で共有地を貸す。
行先はラクロアか。鑑札を見せてもらおう」
雑貨屋のおかみが、店の前で小さな集団を痛ましそうに見ていた。
戻ってくる老人に聞かせるともなくつぶやく。
「いやな世の中になったねえ、可哀相そうに、あんな小さな子たちが」
「正規の口入屋の鑑札を持っとる。こちらは手を出せん」
「何が口入屋だよ!人さらいじゃないかよ!」
目を潤ませて、店の中に入っていってしまった。
共有地の草地で、三人の男がたき火を囲み、酒瓶を回し始める。
少し離れて、数人ずつ胴を縄でつながれた子供たちが、古毛布を分け合って包まった。
ほっそりした少年がシムに近づく。
三歳くらいのおびえた目をした女の子が、その腰にしがみついている。
「バムのぐあいはどう?シム」
「少し熱があるんだ。どうしよう、ルー」




