14 崩御 その1
このあたりからしばらくの間、残酷なシーン、戦闘シーン、敗戦の悲惨な描写が多くなります。
苦手な方はご注意下さい。
14 崩御 1
「抜かりはないな」
豪華な馬具がずらりと壁にかけられた王家の馬屋で、縁の広い帽子で顔を隠した男が、通りすがりにささやいた。
立ちすくんだ相手は、だらだらと冷や汗を流しながら答える。
「お言いつけ通りにいたしました。どうか、どうか娘だけは・・・」
「失敗すれば、お前共々命は無い」
立ち去る足音を聞きながら、無力な父親はがっくりと膝をつき、両手で顔を覆った。
狩り装束の国王、ウィリアムルス六世は、侍従長アベルに呼び止められた。
「陛下、ラクロアの使節がお待ちですが」
「構わぬ。待たせておけ」
馬首を並べて待つ廷臣たちの元へ急ぎながら、無頓着に答える。
近頃要求がうるさくなっているのだ。
魔獣への備えもせずに内輪もめばかりしている間抜けな南方人め。
(あと数年もたってみろ。
活動期が始まれば、はいつくばってこちらの情けを乞うことになるのだぞ)
勢子たちを一瞥し、気に入りの狩猟馬に跨る。
愛用の鞍に落ち着いたとき、ふと感じた、違和感。
それが最後の思念となった。




