11 お茶会その 2
11 お茶会 2
「活動期になったら」
ある日、ルオーが悲し気に尋ねた。
「たくさんの人たちが、魔獣に殺されるのですね」
竜王はうなずく。
「北の荒れ地と私の縄張りの中以外は、ほとんど人は住めなくなる。魔獣たちの力は桁がちがうからな」
「岩狼より強いんですか?」
「岩狼?あんなものは、我等が寝ている間にうろついている鼠にすぎぬぞ」
あの、馬ほどもある岩狼が?
「この世界はお前達には厳しかろう。
だが、心配はいらぬ、人間は繁殖力が強い。
少なくなっても、次の休息期の百年で、また数を増やせばいいのだ」
・・・・・・・・・。
ああ、そうか。
竜王様にとっては、魔獣も、ネズミも、人間も、生き物としては皆同じなんだ・・・。
竜王様は人間ではないのだ・・・ふっと寂しさがこみあげてくるのは、こんな時だった。
そんな夜。
「お休みになれないのですか、ルオー様。
お話でもいたしましょうか?」
寝付けぬルオーに、エラが言った。
「うん・・・でも、怖いのはいやだよ」
先日『片足の人喰い鬼』というお話を聞いて、うなされてしまったルオーは言った。
似たような話を用意していたエラは、とっさに違うのが出て来ない。
「えーっと・・・じゃあ、エラの夢をお話ししましょうか。
エラの夢は、お給金をためて、腕の良いパン職人を亭主にして、一緒にパン屋を開く事なんです。
亭主がパンを焼き、私がお菓子を作るんですよ。
その時はぜひ、王室御用達のお許しをくださいませね」
「『おーしつごよーたし』って?」
「王室の方々が、エラのお菓子を褒めて下さったってお墨付きをいただく事です。
エラのお菓子はおいしゅうございましょう?」
ルオーは大きく頷いた。
でも・・・。
「僕を置いてお嫁に行ってしまうの?エラ」
「とんでもない、まだまだ先の話でございます。
店を買うお金をためて、衣裳箱をきれいなリネンでいっぱいにして、素敵な花嫁のベールをレースで編んで・・・。
でも、何よりもまず、気立てのいい殿方を見つけませんとね」
眼をきらきらさせて夢を語る娘。
それがエラの夢なのか。
では、僕の夢は?
僕の夢。
僕がなりたいのは・・・『黄金のハート』であり続ける事。
竜王様と共にあること。
今も、これからも、ずっと。




