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俺は花山愛乃に会いに行った。その兄である祐樹に会いに行くことはあっても、彼女に会うために彼女の家を訪ねるという経験はなかった――と思ったがこの前の誕生日会も実はそのためであったのを思い出した。危ない危ない。
なぜ、その家を訪れたのかと問われれば、それはまさしく彼女が俺にした愛の告白の返事をするためである。このままうやむやにしてしまうのは男としてどうかと思うし、何よりも彼女に申し訳ない。受け入れるも、断るも、全て直接目の前で述べるのが俺を好きになってくれた彼女に対する礼儀というものだろう。
彼女は真剣な顔をした俺を見ると一瞬、たじろいだがすぐにまっすぐ、俺の方を見た。
俺はただ二言、深く頭を下げて言う。
「ごめんなさい。……けど、好きになってくれてありがとう」
彼女は笑った。少し、泣きそうな顔で、それでも笑った。
「がんばってね!」
俺が去ろうとすると彼女はそう言った。それが受験のことを言っているのか、それとも明後日に控える追試のことを言っているのか、そのどちらでもなく俺が好きになった彼女のことを言っているのか――もし、最後のことを言っているのなら女の子にはかなわないなと思った。




