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神腕のフレンジー   作者: 林檎れもん
2/2

1話 知 闘 (しとう)

少女が目覚めると、そこにはただ青い天井があった。今までにないほど清々しい気分での目覚めだった。


「…目が覚めたか?」


褐色肌の青年が爽やかだが多少生真面目すぎるトーンで話しかける。


「…はい……………?」


瞬間的に少女はたくさんの違和感に気付いた。


「そうか、そうだな。俺も初めての時はそうだったよ。詳しい話は後だ。」


青年は人と接するのにあまり慣れないながらも、必死に少女を宥めようとしている様子だった。真面目なのだ。それが少女にとって面白くて仕方がなかった。


面白い。


初めて。


初めて人に「殺意」以外の感情を抱いた。


奇妙な感覚だ。


「…そうだ、名前を聞いてなかったな。俺はロックウェルだ。父親の苗字だがな。名前は付けられてない。ロックとでも呼んでくれ。」


父親────少女は自分が父親を殺したことを思い出した。


「私は…イリカ。有馬イリカ。」


「アリマと呼べばいいのか?」


「…イリカでお願い。ここは警察…?それとももう刑務所?」


「ここは人類史の時の果て、だ。」






ロックの案内でイリカは大広間に出た。


「やあ、よく来たな。」


白髪の気怠げな男性が、真ん中の席に座っている。真っ青な広間の真ん中でイリカ達を待っていた。そのすぐ右には、幻想と呼ぶに相応しいような美女が佇んでいた。そして左側にいたのは…。


「待ってたぜクソガキ。」


あのときの金髪ヤンキーだった。彼の首元をナイフで切り裂いた感覚を、イリカは鮮明に覚えていた。思い出すだけで、なんというか気持ち悪い感覚に陥った。同時に恐怖を感じた。何故殺したはずの人間が生きているのか。


気持ち悪い。


人を殺した感覚が。


恐怖。


あまりに慣れない感情に、さらなる気持ち悪さを感じた。


「こんなガキを認めろとか冗談だろ?」


「この子はお前を殺すほどの実力を持っていた。」


「そこが問題だって言ってんだよ!俺を殺しかけただろうがこいつは!」


バスでは仲が良さそうに見えた2人だったが、そういうわけでもないようだ。

白髪の男性が仲裁に入る。


「そこまでだレン、ロック。その少女…有馬イリカに説明をしなければならない。」


よく見ると、男性の顔は白髪には似合わない、おそらく40代前半ほどの顔立ちだろう。気怠げな雰囲気を醸すその態度で、実年齢がわからなくなってしまっている。


「マスターあんたも賛成なのかよ!?」


「もちろんだとも。でなければ神腕を埋め込んだりしないさ。」


「ガキ。マスターの長話終わったら左の部屋に来い。」


長話確定とのことだった。そしてその後にどう考えても面倒なイベントが待っているのだろう。


「認証完了。左Aゲート解放します。」


金髪の「レン」と呼ばれた青年は左の部屋に入って行った。


「さて…悩みどころだ。どこから話したら君は納得する?いやはや…納得してもらう必要はそこまでないといえばないのだが…ひとつ問おう。君は前の世界に未練はあったかい?」


未練なんてなかった。何も残ってなかった。友達もいなかった。家族もいなかった。「前の世界」というのに引っかかったが。


「そうだな。まあ思いついた順に説明しよう。一気に話すから、まあわかる程度に聞いてくれて構わない。まず、君の殺人衝動が無くなったのは君の左手に刻まれた『神腕』の紋章の力で制御しているからだ。ここは時の果て。君の住んでいた時代から200年後だ。君のような殺人衝動に駆られる人間を殲滅し、人類の世界を取り戻すための部隊だ。しかし、君はその部隊に選ばれたのだ。これから君は嫌でも殺さねばならない。本能が殺しを求めてる君達ですら嫌というほど、人を殺さなければならないんだ。同じく人を殺す者達をね。『根元』を断てば我々の勝利だ。君達に任せたいのは『狂』による殺人の抑止と『根元』の調査。…まあ、要は、勝って帰ってこいということだ。遠くないうちに君の初任務が来る。ちなみに寝床はさっき君が目覚めたところだ。自由に使ってくれ。過去の品物ならばわりとなんでも召喚できるから、仮に殺意以外の何かの欲に突き動かされてもまあまあ満たすことは可能だろう。話がわからなくても気にしないでくれ。まあ一応聞いておこう。君は我々と共に戦ってくれるかい?」


話の内容はよくわからなかったが、イリカの答えはひとつだった。


「はい。」


今までの世界と断ち切られたことはイリカにとってなんでもないことだった。イリカは答えが欲しかった。自分という存在に答えが欲しかったのだ。


「私は戦います。」


「それは人類のためかな?」


見透かしたように言う。この男は全ての答えを知っている。イリカはそんな気がしてしまっていた。


「100%、私のためです。」


120%自分のためだった。


「よろしい気に入った!よろしくなイリカ!そうだな。とりあえずレンのところに行ってみるのはどうかな?あの金髪の。」


マスターが促すと、ロックがすかさず止めに入る。


「やめといたほうがいい!あいつは…その…。」


ロックが口を紡いだ。


「有馬イリカに殺されたことを根に持ってるんだろ?」


「マスター…そこまでわかっててどうして。」


「ははは、ほんとに彼はわかりやすい奴だ!行ってやってくれないか?なんならロックを用心棒連れて行ってくれても構わない。」


「ああわかった。俺は絶対にオススメしないが、君が行きたいのなら行くといいさ…。」


イリカの答えは出ていた。


「行きます。殺してしまったなら、謝らなきゃいけないので。」


ロックは唖然とした。マスターはより一層大きな笑い声を上げた。


「ふっははははははは!謝る暇なんて多分ないと思うけどね!そうだね行ってごらん!君たちは今日から仲間になるんだ、仲間を知っておいた方がいい!」


「はい。」


仲間。イリカにとって1番実感が湧かないものだった。そんなものはこれまでなかった。家族さえ、自分の手で殺めたくらいなのだから。


「…ならば仕方ない。イリカ…一応死ぬ覚悟しておくんだぞ…。」


ロックは冷たい視線と言葉をイリカに投げた。しかし、それは温かみに満ちたものだった。ロックは、優しい男なのだ。初め感じた、生真面目過ぎる印象というのもその自分でも認識していない心遣いから来るものだったのかもしれない。


「認証完了。左Aゲート解放します。」







金髪の男、レンは首に手を当てていた。


「まだ完全に癒えないのか。」


ロックが問う。


「ああ。ヒリヒリする。」


レンは低い声で答える。


「お前の能力を以ってしてもか。」


ロックが更に問う。


「ああ。俺の能力を以ってしてもだ。」


レンはいじけた子供のように言う。


「あの…。」


勇気を振り絞ったイリカ。


「すみませんでした。あなたを、殺しかけてしまったようで…。」


深く、頭を下げた。


「ああ、気にすんな。」


さっきとは様子が違った。


「本意じゃねえけど…お前とこれから組まなきゃいけねーって言うからよ…。よろしくな。」


そう言いながらレンは左手を差し出した。


「はい…よろしくお願いします…。」


すかさずイリカも左手を差し出した。


グリッ────。


嫌な音と同時にイリカの指があらぬ方向に捻じ曲がった。


「レン!!!貴様!!!!」


部屋にロックの怒声が響き渡る。レンは不敵な笑みを浮かべながら、嫌味のこもったような口振りで返す。


「ハッ。俺を1度殺しかけたやつの勘を確かめたんだよ。俺はこんなやつにやられたのか?アタマくるぜ。」


「馬鹿野郎!そうじゃない!不完全な神腕に刺激を与えたら…!」


「は?」


ロックの叫びと共にイリカの姿が一瞬にして消滅した。


「なんだと…?」


レンの背後に、小さく重い拳の突きが入った。レンは反射的に、咄嗟に受け止める。


「おい、見てんだろマスター。この部屋ちょっと広げてくれ。────ちょい遊ぶ。」


少女は闘いを知る。

テスト期間中に書いたりしてたので死んでます。前回との繋がりが曖昧な点は主人公のイリカに合わせてあります。イリカがレンの首を切り裂いたところまでは鮮明に記憶があります。直後に意識が飛んでるということは何らかあって連れ去られたのでしょう。(それはまたの機会に)

次回初っ端からバトルです。バトル要素どんどんいれていきたいと思います。

そうだ解説しましょう。『神腕』というアイテムが出てきましたが、これにはいくつかの能力が備わっており、殺人衝動の原因物質を抑えてくれます。それと、『能力』を付与する力があります。今回出てきたのはレンの『超回復』ですが、自然治癒可能な傷は瞬時に回復できるという能力です。イリカやロックにも能力があるのでお楽しみに!

マスターの話が長すぎてよくわからないことになってますが、これは「時の果て」から世界を救うという物語です。漂うクロ○トリガー臭ね。まだお世辞にも面白いとは言えない感じですが、こっからなのでホント!(言い訳)今後とも読んでいただけたら幸いです!ではまた次回!

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