はじまり
窓から差し込む光が花瓶に注いできらきらと騒がしく反射させる。
外に広がるのは緑色。どこか外国の庭園のようで。
漆喰の壁に大理石の床。
無意識にスマホの入ったポケットに手が伸びる。
…………あれ?スマホがない…?!
なろうができないよ…………
いつもよりも床が近くて、天井は遠くて。
癖でくるくると指に巻きつけた髪の色は白銀で。
握りしめた拳は小さくって。
ぺたぺた、と触ってみた肌はゆで卵のようで。
見覚えのないゴスロリのような服。
ほんのり紅茶の香りが漂う、ここは──────
ずっと夢に見ていた、小説の中………………………………?
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指で触れた『キーボーゾ』からは、カタカタ、とリズムの良い音が響く。
これはまるで子供の頃に習わされれたピアノのようじゃないか。
触ったボタンに記された文字は、目の前にある画面に表示される。
『h』と、『a』…………
>はじめまして。このたびぶろくをh
どうやって変換するんだ。
カチカチといろんな所をクリックしてみる。
>はじめまして。この度ブログをはじめました、ステラと云います。
あ、できたけど変換間違えた。
>はじめまして。この度ブログをはじめました、ステラと言います。
他国と比べて文明の発達の遅いこのパルスチナ王国に、この最新の機械であるパーソナリ・コムピューターが導入されたのは一昨日。
テスターとして選ばれた僕は、昼夜これを触り続けている。
とは言っても、これしかしていないわけではなくて──────
「すてらー!ごはんー…」
部屋の奥から透き通った声が届く。
走り寄ってくる足音も。
>はじめまして。この度ブログをはじめました、ステラと言います。
今僕の隣にいるパルスチナ王国第1王女。
白銀の髪にゆで卵のような陶器肌。
透き通った碧眼が、彼女を人形のように見せている。
王女は───
僕の妹であり───
娘であり、
嫁…
こんな彼女の成長譚を、無礼ながら書かせていただこうと思います。
ブログ初心者なので、アドバイスもよろしくお願いいたします。
次の更新はまたいつか。
───第1王女の世話係ステラ。どうぞよろしくお願いします。