第9章「小さな反抗心(mind of resistants )」
「ひどい顔ね。ちゃんとお薬が効かなかったのかしら?」
そう言って入ってきたさっちゃんの表情は明るく、すっきりした顔をしていた。
薬が効いて熱が引いたのか、頭痛も楽になっていた。解熱剤は痛み止めの効果もあるらしく、冷や汗が出るほどの痛みも引いていた。
おかげで少し落ち着いた。そして、さっちゃんにいらつく。
「どうして…?」
「えっ?なにが?」
キョトンとしている。心底私が何を聞いているのか分からない感じだ。
「私…。わかるでしょ!さっきの事よ!」
「あぁ。驚かしちゃったかな。ごめんごめん。」
舌を出して、私の頭を撫でながら軽く誤った。
「でも、座薬なんて粘膜接種じゃなきゃ効かないじゃない。口からだと肝臓の代謝の影響を受けるから…」
「そんなこと聞いてない!」
思わず叫んだ。さっちゃんのにこにこ顔が気に入らない。
「どうして私がこんな目に遭わなきゃならないの!」
間髪入れずに平手で叩かれる。
「私を殺せっていったじゃない!」
突然、感情的になったさっちゃんに一瞬ひるむ。
「あの時!素直に私を殺しておけば良かったのよ!今頃はあなたの家に帰ってたわよ!聡明なご両親の元にいたわよ。かわいい妹さんの元にいたわよ。」
「そんな事っ!」
詭弁だ。さっちゃんの狂気に飲み込まれちゃダメだ。冷静な私が心の中で叫ぶ。でも冷静な私は、さっちゃんを怒らしたことを理解してその先を予測してしまう。そして、私に芽生えた小さな反抗心はあっさりと折れた。
「そんな事…、そんな事出来るわけないじゃない…。」
また、平手で殴られる。
「貴女の。貴女のせいよ。」
もう涙も出ない。でも、怖いという感覚は消えない。
「そう。全部私のせいよ。でも、貴女がまだここにいるのは貴女自身のせいよ。私を殺せば、すぐに終わるわ」
さっちゃんはポケットから何かを取り出して、私に差し出した。
「これを使いなさい。右手だけ自由にしてあげる。後は私を殺してから外せばいいでしょ?」
映画や漫画ではよく見るけど、リアルにはあまり見ることのない物。
それは、拳銃だった。