第2章「気分はいかかが?」
首の痛みで呻く。そのせいで目が覚めた。
目の前には完全な暗闇。
頭痛。首筋の痛みとだるさ。脇腹や下腹部にひりつく痛み。
体を動かそうとしてもほとんど動くことができない。椅子に縛り付けられているらしく、肩を揺らすくらいしか体を動かせない。椅子自身も固定されているようでピクリとも動かない。
泣き叫んでも、助けを呼んでも、何の返答もない。
そして気がつくと、泣きながら眠っていた。
光を感じて目を覚ます。定まらない視界の中、頭痛と関節の痛みだけは現実的だった。泣き叫ぶ気力は湧いてこない。気の済むまで暗闇の中で泣き叫んだから。
深呼吸してあたりを見渡す。
目の前に鉄製のドア。視界に窓はない。
やはり椅子に縛り付けられている。両足が全く動かないし、腰も固定されていて動かない。両腕は後手に縛られている。逃げられそうな要素はまるでない。
不意に肩に何かがのしかかる。誰かの手だ。
「おはよう。気分はいかが?」
さっちゃんの声。後ろから。
どうしてなんで?
ここは何処!たすけて!
訳がわからない。
パニックから立ち直れない私を、いつの間にか前に回っていたさっちゃんが平手で何回か叩いた。
「落ち着いた?」
落ち着くわけがない。叫び続けている。
「落ち着きなさいよ。ねっ?」
そう言うとさっちゃんが私の顔に何かを向ける。パニックに陥りながらも私は反射的に避けようとする。でも、顔を少し背けられたくらいだった。心臓が握りつぶされたような感覚を感じる。そのすぐ後に顔に、まるで水をかけられたような感触がした。
「落ち着いてくれないと、私の銃が火を…。いえ…、水を吹くわよ?」
さっちゃんは大きなタンクが付いている半透明のプラスティック製の水てっぽうを私に一度見せつけてから、顔にめがけて水を浴びせ続けた。本当に水をかけられていたのか…。
「ちょ…っちょっと!やめて!」
「『やられたー!』とかいいなさいよ。…、そんなコマーシャルあったわね。」
さっちゃんは笑いながら水てっぽうを撃ちまくる。息ができない。再びパニックに陥る。
「落ち着いてっていったわよねぇ。」
後ろ髪を掴んで無理やり上を向かせられた。首が後ろ向きに引っ張られて抵抗ができない。
「落ち着いてって言ったわよね?」
鼻に水てっぽうが押し当てられる。
「悪い子にはお仕置きが必要ね?」
勢いよく放たれた水は、体液との真水の浸透圧違いから私の粘膜を刺激しながら鼻から喉を通って肺に入り、むせかえって鼻と口からでた。
それは水てっぽうのタンクがなくなるまで続けられた。